「結局そういうことなんだろう? つまり君は弱者であり、人間に頭が上がらない。その積荷だって本当は食べたいのに、罰せられるのが怖いから、手を出せないだけじゃないのか?」
なかなかどうして頭も舌も回る鳥に、ロバは言葉を詰まらせた。のんびり屋のロバはこの手のやり取りが苦手である。もどかしさと苛立ちを覚えながら、鬱陶しそうに言った。
「……君には分からないだろうけど、僕は人間と共存してうまくやっているんだよ」
そんな苦し紛れともとれるロバの言葉に、鳥の方は一層調子付いて笑う。
「アハハ。そもそも道端の草花を食べて生活するなら、人間との協力なんていらないだろう。その上、労働まで強いられるなんてね」
ここまで来ると、温厚なロバもさすがに我慢の限界だった。
「……分からない奴だな」
と小さく呟き、急に首を大きく曲げて後ろを向いた。そして、鳥にがぶりと噛み付く。
「ぎゃっ!」
と短い悲鳴。
「痛いぞ! 何をするんだ! 羽が折れたじゃないか……」
うろたえる鳥を、ロバは無言で荷に引っ掛けると、何事もなかったようにまたアザミを食べ始めた。
豹変したロバの態度に、鳥は何が起こっているのか分からない。身動きもとれなくなり、もう叫ぶしかなかった。
「おい! 私のことまで荷にするつもりなのか!」
「まあ、そうなるだろうね。人間は鳥肉も好んで食べるようだし」
「何て恐ろしいことを……」
「言っただろう? 僕は人間と共存しているんだ」
「だから私を人間への貢物にしようというのか!」
鳥がそう叫ぶと、ロバはふいにアザミを食べるのをやめた。そして、振り返り、哀れむように言う。