二十年後、いい女性になり父は彼氏となる男性がどんな人か気になっていた。しかし彼女は彼氏を作る気はなく、ずっと両親と共に暮らしていた。
少女が六十五歳になった頃、体に異変が起きた。
「お父さん、体がなんだかだるい。」
「え?どこか具合でも悪いのか?」
「分からない。でもこの感じなんか嫌な予感がする。」
「嫌なって?まさか。」
「うん。そろそろ死んじゃうかもしれない。」
「そんな冗談はやめなさい。ねぇ母さん。」
「ええ。」
「本当?」
「だから安心しなさい。」
「うん。」
それから二年後、彼女の異変はさらに酷くなっていた。
「どうしようお母さん。体のあちこちが痛いし、息苦しい。」
「うーん、分からない。何が起こっているのかしら。」
この一家が度重なる大地震や津波、台風、台所事情やお財布事情の悪化を乗り越えながら、楽しく生きていた裏側で近所の住民の家族構成も変わっていた。それを察知した父がこの二年間の間に少しずつ娘を守るべく動き始めていた。
娘は夕飯の時、父と母に向かって初めてある話をした。
「お父さんとお母さんには私が生まれる前に死んじゃったけど、お兄さんがいたでしょ。その人に直接あったことはないけど、大体どんな人か分かる気がする。初めて具合が悪くなった時、お兄さんが話しかけている気がしたの。つまり、お兄さんの名前は『戦争』だったんじゃない?」
「え?」
「その反応は多分そうだよね。なんだか悲しそうな声だった。『自分は喜ばそうと頑張っているのに色々な人を傷付けて、辛かった。』って。じゃあ私はそんなお兄さんみたいな人を作ってはいけないなと思ったの。だから教えて、今、この家で何が起ころうとしているのか。」