「ありがとう!僕こういうのがほしかったんだ!あれ?このヒツジ、寝ちゃったよ」
子供のような笑顔に、緊張が和らいだ。他人のそら似、ということもあるのかもしれない。あまりにも残酷な偶然ではあるけれど……。
汐穂は、東京の大学に自宅から通う、ごく一般的な女子大生だった。身長は164cm。どちらかといえば細身で、セミロングの黒髪を少し内巻きにしている。奥二重でやや切れ長の目。鼻と口は小ぶりで、全体的に真面目そうな印象を与える容姿だ。普段はコンタクトレンズを使っている。現在は3年生で、決まった彼氏はいなかったが、入学以来ずっと親切にしてくれる神崎がいた。同じサークルの1年先輩で、神崎の気持ちには、なんとなく気づいていたし、汐穂も少なからず好意を抱いていたのだと思う。前期テストの打ち上げと称した昨日の大規模な飲み会で、ふと二人きりになったときに、汐穂は神崎から告白を受けた。
「就活が終わったら、ちゃんと言おうと思っていたんだ。つきあってほしい」
正直、すごく嬉しかったし、彼女になれたらいいなとも思った。でも、いつもそう……。誰かと二人きりになったり、酔った勢いでキスされそうになったり、飲み会の帰りにノリで手をつなぎそうなったり……、そんなときにはいつも必ず、海翔の顔が浮かぶ。青くて白くてきれいで優しい、会いにいくといつも「汐穂、ありがとう」って言っていた海翔の……。
結局神崎には、酔っておちゃらけたふりをして、その場は冗談にしてごまかした。
「じゃあ、僕は行くね。さようなら」
海翔そっくりの青年の声に、ふと我にかえった。
「あ、うん」
夢なのかもしれない。別人だと思う。でも……。金髪の海翔がドアノブに手をかけたとき、
「ちょっと待って!」
汐穂は思わず声をかけた。
「今日、忙しい?」
「忙しくはないけど」
「あのね、今日、遊ばない?」
「遊ぶ?何をしてだい?」