小説

『待つ』野口武士(『浦島太郎』)

 それに比べて、何て私は恵まれているのだろう。私を待っていてくれる人は何人もいるのだ。……自惚れでなければ。それに、私も誰かに「待ってるよ」と言ってあげたい。
 自分の現在の境遇に感謝しながら、それでも心は晴れず、沈痛な面持ちでアコは歩いた。
 ふと思い出し、アコはさっきシャッターが落ちた時に何か写ってないかと確認してみた。
 波打ち際の白く泡立つ波と真っ暗な空。しかし、やはり女性は写っていなかった。

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