その声に、私は何かひっかかるものを感じた。
だが、私の思いとは裏腹に矢は既に手元からはなれていた。
矢は、鳥の眉間に突き刺さる。
そのとき、鳥が再度鳴いた。
『いつまで』
その途端、私の耳元で何かが割れるような音を聞いた気がした…。
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私はカーブミラーの割れた欠片を踏みしめながら狭い道路を歩いている。
滴る汗はとめどなく、私はふらつきながら道場にたどりつくと引き戸を開けた。
暑い日差しのためか、ずいぶんと汗をかいてしまったようだ。
私は更衣室に入るとタオルでぬめりつく汗を拭い、道着に着替えることにした。
幸い、道場にも更衣室にも誰もいないようだった。
そうして、私は弓を持つと口の中の砂利に不快感を感じつつ、ひさしのついた射場を歩いていった。
矢道には相変わらず暑い日差しが当たっている。
私は練習を始めた。
一本目の矢を放ったあとのことだ。
ふいに一羽の奇妙な鳥が私と的との間に舞い降りてくることに気がついた。
ひどい、既視感を覚えた。
私はこの鳥とどこかで遭ったような、そんな気がした。
だが、そんなことはありえないはずだった。
鳥は朱色と黄色の混じった妙な羽の色をしていて、五本もの鋭く尖ったかぎ爪を持っていた。そして、鷲くらいの大きさをもつその鳥はゆっくりと顔をあげようとした。