「実行したのか?」
「いや、していない。そう思っている内に俺の心と体の実態が無くなり、気が付けばこの竹林にブーランコしていたのだ」
「それで・・・、俺を襲う予定だったのか?」
「多分そうだと思う。だが、馴染みのあるお前の顔を見るや否や、俺に残ってる最後の良心が発動したのだ。友を傷付けたくはない。その気持ちが俺を我に返させてくれたのだ。マサキよ、早くこの場から立ち去ってくれ。直に俺は人でなくなる」
腕を組み天を仰いだマサキは少し改まって言った。
「まあ、待ってくれ。いくら科学が発達した社会とはいえ喋るパイナップルなんてのは世界中探してもお前だけだ」
「まあ、そうだろうな」
「生きる手段なんていくらでもある。決められたレールに乗れなかったからと言って落胆して逆恨みすべきじゃない」
「何が言いたい?」
「俺と一稼ぎしないか?」
「何だと!?どうやって?」
「動画サイトにアップロードするんだよ。『喋るパイナップル』としてな。再生回数が上がれば上がるほど広告収入も増えて俺もお前もウハウハだ。そのうちテレビ局の連中も放っておかないだろう。事務所契約、本なんかも出版して夢の印税生活だぜ?」
「むう・・・」
「俺がマネージャー兼相方だ。実は俺も今のクソみたいな会社辞めたいと思ってたんだよ」
「何とお前も悩んでいたのか!?」