小説

『日出ずる村の記』虫丸尚(『聖徳太子伝記』)

 五月に誕生日を迎えて、翌月の夏至の日。この年の日子に決まった私の家は、日子屋と呼ばれ、村の長老や神社の世話役による寄り合いが開かれた。長老は言う。
「今年も無事に日子が決まり、お天道さまは村に新たな恵みを授けてくださる」
一同は拍手で、私を迎え入れた。皆が目を細めてこちらを見ている。

 それから半年間のショウジンケッサイの日々は、とても辛いものだった。誘い惑わされ、それでも我慢して、私は今、闇の中で、岩窟の中から日(ひ)女子(めこ)が現れるのを待っている。

 山を越えた東側には、大和の国の日沈む村があるという。邪馬台の昔より、卑弥呼の住まう村である。

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