ブックショートを運営するパシフィックボイスは、朝日新聞社が運営する認知症に特化したウェブメディア「なかまぁる」主催のショートフィルムコンテスト「なかまぁる Short Film Contest2020」に協力しています。今年、同コンテストでは「ショートストーリー部門」を新設。SOMPOホールディングス株式会社、SOMPOケア株式会社、SOMPOひまわり生命株式会社、損害保険ジャパン株式会社の特別協賛のもと「SOMPO認知症エッセイコンテスト」を開催し、エピソードや小説を募集しています。テーマは、「認知症とともに生きる・・・誰もが自分らしく生きられる未来へ」。SOMPOグループ各社の認知症プロジェクトご担当者にコンテストや募集テーマに込めた思いを伺いました。
<「SOMPO認知症エッセイコンテスト」応募要項はこちら>
左から、SOMPOケア株式会社 尾田淳さん、SOMPOホールディングス株式会社 金子幸乃さん、SOMPOひまわり生命株式会社 池田真梨さん、損害保険ジャパン株式会社 加藤笑子さん
―SOMPOグループさんは、「SOMPO認知症サポートプログラム」と題し、グループ全体で認知症への取組みを積極的にされています。そこには、どのようなきっかけ、経緯があったのでしょうか?
金子:SOMPOグループが認知症への取組みを始めるきっかけは、2015年の介護事業への本格参入です。そこで、超高齢社会である日本が直面する多くの課題を改めて認識しました。とくに強く感じたのは、介護現場の人手不足でした。高齢化が進むにつれて、介護を必要とされる方もどんどん増えていきます。でも、現場の介護を担う人材は不足している状態です。この課題に対し、私たちは介護事業会社として、介護を担う人材不足への対策、具体的には、デジタルの活用や業務の効率化、介護人材の育成などを推進してきました。ただ、それだけでは、増え続ける介護サービスへのニーズに対応することができません。そこで、私たちは、介護を必要とする大きな理由である認知症に伴う各種課題に取り組むべき、と考えました。SOMPOグループは、介護事業だけではなく、経済面でのサポートを提供できる保険事業も有しています。グループ全体として総力を結集することで、認知症になる前の方々に必要な経済面でのサポートから認知症になられた方々に必要なケアまで、認知症に関する総合的なソリューションを提供するために、事業横断で新たなプログラムを始めました。それが「SOMPO認知症サポートプログラム」です。このプログラムでは、「認知症に備える・なってもその人らしく生きられる社会を」というスローガンを掲げています。そのなかで、「認知症に備える」という視点では、保険会社であるSOMPOひまわり生命と損保ジャパンの2社が、そして、「なってもその人らしく生きられる社会を」というところは、介護事業を展開するSOMPOケアが担っています。
池田:私は、SOMPOひまわり生命という生命保険会社で認知症に関連する商品やサービスの担当の担当をしています。生命保険というと、「何かあったときの備え、安心」というイメージが強いかもしれません。けれども、当社は、2016年から、商品・サービスを通じてお客さまが健康になることを応援する「健康応援企業」を目指して変革を進めており、お客さまに万が一のことが起きる前から、お客さまの健康をサポートする事業に大きく舵を切りました。つまり、お客さまから「健康になって良かった」とおっしゃっていただけるような会社を目指しているんです。そのなかで、保険(Insurance)と健康(Healthcare)を融合させた「保険+健康(Insurhealth:インシュアヘルス)」商品を打ち出し、従来の経済的なサポートのみならず、健康を後押しできる体制を整えています。
SOMPOひまわり生命株式会社 事業企画部 サービスデザイングループ 副長 池田真梨さん
池田:そのインシュアヘルスの代表的な商品が、2018年10月に発売した「笑顔をまもる認知症保険」です。これは、認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)になった時点で給付金を支払うという業界初の商品です。さらに、そうした経済的なサポートとともに、認知症に対するサービスも提供します。具体的には、SOMPOグループ全体で展開する「SOMPO笑顔倶楽部」というウェブサイトでの認知症に関する各種情報提供サービスと、SOMPOひまわり生命がシリコンバレーのスタートアップ企業であるニューロトラック社との業務提携により展開している「ニューロトラック 脳ケア」というサービスの2つです。どちらも共通しているのは、認知機能チェックを気軽に受けていただけること。現時点での認知症のレベルを計測し、現在の生活習慣をどう改善したら将来の認知症のリスクが下がるかを提案するという、早期予防につながる支援サービスです。
加藤:損保ジャパンでは、「お客さまの安心・安全・健康に資する最高品質のサービスを提供し、社会に貢献する」というグループ経営理念のもと、当社の保険を扱う代理店とともに、お客さまの生活をトータルでサポートしていきたいと考えています。「認知症サポートプログラム」については、「認知症に備える・なってもその人らしく生きられる社会を」のうち、「認知症に備える」という視点から二つの取組みをしています。
一つ目は、「認知症サポーター」の資格取得です。グループ共通の取組みですが、当社は特に注力していて、2019年の段階で、社員で6,300名以上、代理店さんが1,700名以上、合わせて8,000名以上が、認知症サポーターの資格を持っています。当社の場合、たとえば、保険金をお支払いする業務で、事故対応の際、実際に認知症の方と直接連絡をとるケースがあります。その時に、認知症について正しい知識を学んだ認知症サポーターが対応することで、お客さまとのコミュニケーションがスムーズになるわけです。当社を含めたグループ全体では、2019年度末時点で17,000名を超える「認知症サポーター」がいて、各事業においてその知識を生かしています。
損害保険ジャパン株式会社 広報部 メディアグループ 加藤笑子さん
加藤:そして、二つ目は、「親子のちから」という、 企業・団体向けの親の介護に伴う費用負担を補償し、介護離職を防止する商品の販売です。いま、40代や50代の働く世代の方のなかで、親御さまの介護のために会社を辞めざるをえない状況に陥ってしまう、いわゆる介護離職が大きな社会問題になっています。当社は、「親子のちから」によって、従業員の親御さまが要介護状態となってから最大10年間、老人ホームの入居費用や介護費用を最大1,000万円まで補償し、仕事との両立をサポートします。働いている人は夢を諦めず仕事を続けられて、企業側も働き手を失うことなく会社を守っていくことができる—私たちはそんな社会を目指しているんです。
尾田:私たちSOMPOケアが目指さなければいけないのは、共生社会の構築だと考えています。日本ではまだまだ、「認知症は怖いもの」といったイメージが強いです。そういったイメージを変えていく、つまり、予防とともに、認知症になっても、その人らしく暮らせる社会を目指していくことが、私たちの使命だと認識しています。
具体的には、まず、予防という観点では、「SOMPOスマイル・エイジングプログラム」という高齢者の生活習慣改善を通じて認知機能低下を予防するプログラムを今年7月からトライアルではじめています。そして、共生社会の構築という観点では、新型コロナの環境下ということも踏まえて、オンラインを活用したやり方を模索しながら、認知症当事者の方やそのご家族、地域の方が交流できる認知症カフェの運営に、より力を入れていこうと考えています。
金子:このように、SOMPOグループでは、グループ全体で、認知症という大きな課題に向き合い、各事業を通じて、お客さまのあらゆるニーズ、立場に合わせた商品、サービスを提供しています。それらを総称したのが、「SOMPO認知症サポートプログラム」なんです。
―非常に心強いプログラムですね。そして今回、「SOMPO認知症エッセイコンテスト」に、まさにグループ横断で特別協賛いただいています。募集テーマは、「認知症とともに生きる・・・誰もが自分らしく生きられる未来へ」。今回、本コンテストにご協賛いただいた思いやこのテーマに込めた思いをお伺いできますでしょうか。
金子:「SOMPO認知症サポートプログラム」で私たちが目指しているのは、「認知症に備える・なってもその人らしく生きられる社会」です。今回の募集テーマである、「認知症とともに生きる・・・誰もが自分らしく生きられる未来」は、その社会が実現された未来だと考えています。
私たちが高齢者になったときに、認知症になっていてもいなくても、自分の人生を楽しんでいる、生きていて良かったと思えるようにしたい。今、認知症という課題を解決することは、今の高齢者、将来の高齢者である私たち、そして次の子供たちの世代の課題も解決することになると考えています。そのためにも、いま、大変な思いをされながら、認知症という課題に向き合って頑張っていらっしゃる方々、実際に、ご自身やご家族が認知症になっても自分らしく生きていらっしゃる方々の声を汲み上げて共有することは、非常に大きな意義を持つと考えています。
SOMPOホールディングス株式会社 認知症プロジェクト推進室 課長 金子幸乃さん
―たしかにそうですね。そういった思いが共有され広がっていくことで、認知症のイメージも変わっていくような気がします。また、今回、テーマに加えて具体的なエピソードの例を記載していただいています。各社さんの賞もありますが、そのあたりも含めて教えてください。
池田:グループのなかで「認知症に備える」役割を担う当社として特に親和性が高いのは、まず、<認知症・介護に関わる、健康でいてくれたことへの感謝のエピソード>だと考えています。また、SOMPOひまわり生命は、「あなたが健康だと、だれかがうれしい。」というスローガンを掲げる健康応援企業ですから、<認知症・介護にまつわる「だれか」が喜んでくれたエピソード>もお待ちしています。
加藤:先ほどお話ししたとおり、損保ジャパンでは、商品分野で「親子のちから」を提供していますので、たとえば、<認知症・介護において、親子の絆と感謝を感じたエピソード>があったらいいなと思います。また、介護離職の話もさせていただきましたが、<認知症・介護に関わりながら夢を叶えたエピソード>もご応募いただけたら嬉しいです。
尾田:私はこれまで約20年間介護に携わってきました。その経験から言うと、認知症の方を介護する家族の8割くらいの方は、非常に苦労されているうちに認知症に対してマイナスの感情を抱えるようになってしまっていると感じています。一方で、残りの2割の方は、認知症をしっかり受け入れて対応されているように思えます。私は、そういう方が感じた、<認知症の方と家族の心温まるエピソード>が読めたらいいなと思います。
かつて、私が実際に耳にしたことがあるエピソードを例としてご紹介します。認知症の旦那さまが、奥さまのことを忘れているにも拘らず、二人で一緒にいるときにプロポーズをしたそうなんです。奥さまの存在が旦那さまになにか安心感を与えたのか、とにかく、そういう言葉が出てきた。それで、奥さまは最初驚いたそうですけど、「よろしくお願いします」と……そして、実際に、結婚式まで挙げたそうです。私は非常に心を動かされました。もちろん、そんな壮大なお話ばかりではないと思いますけど、こういったどこかほっこりするような作品を読みたいです。そして、そういうお話は、8割の認知症に対してマイナスの感情を抱えてしまっている方々に、なにか気づきをもたらすこともあるかもしれないなとも思います。
SOMPOケア株式会社 認知症プロジェクト推進部 リーダー 尾田淳さん
―今回、エッセイコンテストと銘打ってはいますが、小説も受け付けています。実体験はもちろん大切ですが、そういう経験のない人が想像力を膨らませて作品を書くこともとても大事ですよね。
金子:はい。非常に大きな意味のあることだと思っています。実際に身近に認知症の方がいない方、介護に携わっていない方からのご応募ももちろんお待ちしています。小説を書くためには、色々と調べたり、準備が必要ですし、それを人に伝わるような文章にする努力が必要ですよね。そうやって、認知症について真剣に考え、取組んでくださる方の存在は、非常に大切ですし心強いです。それに、たとえば、いまから40年後の2060年には、65歳以上の高齢者のうち、三人に一人は認知症になると言われています。自分自身が認知症になるか、ならなかったとしても、おそらく家族、親戚、身近な方のなかに認知症の方がいることになるでしょう。つまり、誰しもが他人事ではないんですね。だから、いまは直接、認知症と関わりがなくても、自分ごととして考えていただけるととてもありがたいです。
―それでは最後に改めて、今回のコンテストに期待されていることをお話しください。
金子:私たちが感じているのが、まだまだ認知症に対する誤解や偏見が多いという現実です。これだけ大きな社会課題であるにもかかわらず、自分に関係ある課題として、表立って話しをすることがはばかられるテーマになってしまっている。私たちは、そういう状況自体も解決すべき課題だと考えているんです。ですから、今回のコンテストによって、実際に課題に向き合っている人たちの前向きな思いや、これをきっかけに認知症に興味を持ってくださった方の作品に込められたポジティブなメッセージを集め、発信し、共有することで、認知症になっても、前向きに自分らしく生きていくことができるとみなさまに気付いていただく機会を提供したいと考えています。さらに、このコンテストを通じて、SOMPOグループが、認知症を取り巻く様々な場面、ライフサイクルのなかで、いつもみなさまに寄り添うことができる存在だと感じていただけたら何よりです。
―ありがとうございました。
(2020.8.24)
<「SOMPO認知症エッセイコンテスト」応募要項はこちら>
■SOMPOホールディングス
SOMPOホールディングスは、1888年創業の損害保険ジャパン株式会社や1981年設立のSOMPOひまわり生命保険株式会社等の保険事業を中核とし、介護事業などに事業領域を拡大しています。お客さまの幸せな人生をサポートする「安心・安全・健康のテーマパーク」を構築し、認知症に関する社会的課題の解決に貢献するため、2018年10月に、グループ横断で「認知症に備える・なっても その人らしく生きられる社会」を目指す「SOMPO認知症サポートプログラム」を立ち上げ、展開しています。
■SOMPOケア
SOMPOグループの介護事業会社であるSOMPOケアは、全国に介護付きホームやサービス付き高齢者向け住宅を400 以上、加えて豊富な介護サービスを提供している 550 以上の在宅事業所を展開しています。企業内大学「SOMPOケア ユニバーシティ」による人材育成や、大学・専門教育機関との連携による共同研究・共同事業、食事や栄養に関する企画・商品開発等を行う「SOMPOケア FOOD LAB」を展開し、「介護の総合ブランド」として、ご利用者さまの尊厳を守り自立支援に資する介護を全社一 丸となって追求しています。
■SOMPOひまわり生命
SOMPOひまわり生命は、「万が一」をお支えする生命保険会社として、お客さまが健康になるための「毎日」にも寄り添い、「万が一の備え」と「毎日の健康」の双方で、お役に立てる健康応援企業への変革を目指しています。実際に、保険(Insurance)と健康(Healthcare)を融合させた「保険+健康(Insurhealth:インシュアヘルス)」商品を打ち出し、2018年10月には業界初※のMCIを保障する「笑顔をまもる認知症保険」を発売するとともに、認知機能チェックを行い、将来の認知機能低下のリスクを下げるため、生活習慣の改善をアドバイスするアプリサービス等の提供を行っています。
※ 2018年10月発売当時
■損保ジャパン
損保ジャパンは、お客さまの安心・安全・健康に資する最高品質のサービスの提供を目指すSOMPOグループの中核会社として損害保険事業を展開しています。全国各地に拠点をもつ強みを生かし、グループ各社と連携しながらお客さまのあらゆるライフステージをサポートしています。2018年からは、親の介護を理由に離職する「介護離職」の課題に着目し、従業員への介護費用の補償と介護サービスのご提供をしながら、企業側の働き手の損失防止を実現する商品「親子のちから」の販売を開始しました。超高齢社会を取り巻く介護の課題に直面するなか、誰もが夢を諦めず「仕事と介護の両立」ができる社会を目指します。