インタビュー
ブックショートのコラボレーション企画第6弾として、8月1日(木)から「SOLARE AWARD」を開催します。大賞作品は、賞金50万円に加えて、ショートフィルム化の可能性も! さらに、月間賞として、毎月10名様にホテル宿泊券もご用意しています。そこで今回は、「SOLARE AWRD」について、より詳しく知っていただくために、ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ株式会社 代表取締役社長 井上 理さんに、「人と人とのつながり」という募集テーマに込めた思いについて語っていただきました。ご応募前にぜひご一読ください!
-はじめに、ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツさんがどのような事業を展開されているのかをお伺いできますでしょうか。
ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツは、一言でいえば、ホテル運営の専門会社です。世の中に、ホテルの運営会社は多数存在しますけれども、私たちの大きな特徴は、物件を自社では所有せず、ホテルの運営のみに特化している点でしょう。現在は、国内で51ホテル、海外で2ホテルを展開しています。ただ、私自身は店舗数にはあまりこだわりを持っていません。それはあくまで、マーケットから評価された結果としてついてくるものですから。
-御社は、「街と共に、お客様の人生をより楽しく、より豊かに。」というミッションを謳っていらっしゃいますよね。
ええ。一つの大きなポイントとしては、ミッションのなかに、「街と共に」という言葉が入っていることです。宿泊業というのは、その周辺の地域が元気でなければお客様にいらしていただけないわけです。そうすると、自分たちだけが良ければいいというスタンスでは当然成り立たちません。ですから、私たちのホテル事業は、街に根ざし、地元の方たちと一緒にその土地を盛り上げていくことを目指しているんです。
-素敵ですね。
さらに、私たちは、「さあ、新しいホテルを創造しよう。」というビジョンも掲げています。ここで言う「創造」は、「無」から「有」を生む、というよりも、お客様のニーズを汲みとって現在あるものをより良くしていく、あるいは、宿泊施設としての機能に何か別の体験を組み合わせることによって、いまの感覚とは違う新しいホテルを作り出していく、というニュアンスで使っています。私たちの目指す新しいホテルは、現在の状態を単純に、より綺麗に、より清潔にします、という流れでは顕れてこないでしょう。むしろ、いまのホテルの延長線上には存在していないものだと思います。
-何かと掛け算して新しい価値を創出していくと。
ええ。私たちのスタッフそれぞれが持つ新しいホテルのイメージは各自違ってもいいんです。ただ、いまのホテルの概念から切り離して思考することが必要だと思います。その結果として、いまの感覚だと「ホテル」と呼んでいいのかわからない新しい何かが生まれて、それを私たちが、「新しいホテル」と呼ぶことになる、ということでしょうね。そこでは、必ずしも宿泊事業が主である必要さえないのかもしれません。
-宿泊だけにこだわらず、複合的な価値を提供していくということですね。
そうですね。今後、ホテルが複合施設化していくのは、世の中の流れとしては十分想定されるものだと思います。そもそも、ホテルは複合施設だったんです。けれども、現在では、大型のフルサービス型のホテルはどんどん減少しています。結局、単純にテナントビル化し、サービスをパーツでバラバラに提供してしまったがために、複合体としての価値を作り上げられなかったんですね。一方、私たちが目指す複合施設化は、それぞれのサービスが有機的に結びつくことによって新しい価値を生み出すという形。しかも、ハードではなくソフトを組み合わせるので、大型化は必要ありません。
-それが御社の目指す新しいホテルの形。すでにその理念を体現しているホテルはありますか?
もっともわかりやすく体現しているのは、「ランプライトブックスホテル名古屋」かもしれません。そこは、複合施設化されているんです。客室を宿泊のための場所として切り離して考えているわけではなくて、あくまで、1階の本屋さんに並ぶ本の読書スペースという位置付けにしているので。金沢の「雨庵 金沢」や東京・赤坂の「インソムニア 赤坂」も同じ考え方で作っています。私たちは、新しく展開するホテルについてはすべて、1階部分を非常に重視しています。1階で新たな付加価値を生むことを前提に、全体を設計していると言っても過言ではありません。ホテルはこれまでも、さまざまな人たちが集う場所として、つまり、人と人とのつながりを作る場所としての役割を果たしてきました。私たちは、1階部分に誰でも利用できるオープンスペースを設けることによって、その機能をより促進させて、結果的に、ホテル全体の価値を上昇させていこうと考えています。
-今回、「SOLARE AWARD」で募集するストーリーのテーマは、まさにいまお話しいただいた「人と人とのつながり」です。どのような作品を期待されますか?
まずは、なによりも、人と人がつながることの喜びを表現していただけると嬉しいです。人間関係の希薄化が叫ばれているなかで、知らない場所で知らない人同士がつながれたとしたら、非常にワクワクするし、楽しいと思うんです。それは、お客様同士のコミュニケーションもそうでしょうし、お客様とホテルのスタッフという関係もあるのかもしれません。そして、生まれたつながりによって、どんなことが起こるのか。それが感じとれるような作品を期待したいなと思います。
-ホテルのスタッフが媒介になって、まったく知らない人同士がつながることもあるかもしれませんし、あるいは、もともと仲良しの友人同士が旅行して、より関係が深まるなんてことも。いろいろなつながりが想像できますね。
ええ。そのなかでも私たちはとくに、飲食の場がつながりのきっかけになりやすいのはではないかと考えています。実際、新しいブランドについては必ず、施設の1階に、さまざまな人々が交流できる場所としての飲食施設を備えるようにしています。食を通すことで、お客様とホテルのスタッフはつながりやすくなるでしょうし、気さくに飲んだり食べたりするなかで、お客様同士のコミュニケーションも生まれてほしい。もちろん、見知らぬ人同士がいきなり会話をはじめるのは難しいと思うんですけど(笑)、飲食の場であれば、何かが起こるような気がするんですよね。いま、ホテルは宿泊主体型が多くて、飲食施設を作らない傾向が強いです。けれども、私たちはあえて、ビジネス上のリスクを認識したうえでも、飲食施設を展開しているわけです。そこで、人と人とのつながりが生まれてほしいという願いを持っているからです。
-そこでのつながり方が、応募者の皆様にとって頭のひねりどころでしょうね。飲食を介して生まれる会話もあるでしょうけど、直接のコミュニケーションではなくとも、同じ空間にいる人たちが、何か、思いで間接的につながったりということも……。
そうですね。あとは、私たちのホテルの飲食施設では、ローカルのパートナーから食材を仕入れたりもしているので、そういうものがきっかけになるということもあるかもしれませんね。ホテルで食事した後に、生産者の方との出会いが生まれるとか……。
-そういう風に考えていくとテーマの捉え方が広がりますね。飲食の場だけで完結するお話もありだとは思いますけれど、それがきっかけになってのちに何かが生まれるという。きっといろいろな物語をご応募いただけると思うのですが、それが将来的に、御社が運営するホテルの業態に影響を与えるという可能性もあるでしょうか?
ありえると思いますね。私たちだけで想像できる範囲は、極めて限定的ですから。応募者の皆様の豊かな想像力によって生まれる物語は、非常に参考になるでしょうし、今後、私たちが創造していく新しいホテルにも大きな影響を与えることになるのではないでしょうか。ご応募いただいた作品のタイトルがホテル名になる可能性だってゼロではありません。私たちにとって、基本的にはタブーはないです。「ホテル」という固定概念を覆してくれるような、私たちの想像の範囲を超えるような楽しい作品をお待ちしています。
-ありがとうございました。