リンレイアワードにご応募いただいた作品の中から選ばれた最終候補作品15作品です。
『箒』
九(いちじく)
妊娠の報告をするため、実家に帰省した林山サトミ。新しい命を授かったことへの喜びがある一方、初めての妊娠に不安を感じている。その不安を母に伝えた次の日、目覚めると足元の壁に逆さまにした箒が立てられていた。それは、無口な父からのプレゼントだった。
『我が家のお掃除大作戦』
萩野燕
東京から地元へと単身赴任で戻る『僕』を待っていたのは、妻と息子の武史と、小さな小さな新しい家族だった。命を育てる不安、思いがけなく始まるお掃除大作戦。たった週週間の出来事が息子を、そして『僕』を変えた。
『フィラメントな夜』
もりまりこ
笠井雫という名前がどこかしっくりしなかった5年間にピリオドを打った。それでも心の中では、なにかがもやっていた。片付け物をしながら、古ぼけたハガキをみつける。20年後に小学校で逢いましょうというメッセージ。意味もなく指折り数えるとその日付はちょうど、1週間後にせまっていた。
『こびりついたものが、ふきとれて』
公乃まつり
産休から復帰して、今ドキの働くママデビューをした結衣。かわいいけど一時も目を離せない息子、協力的なのにどこか抜けてる夫との生活に、疲れきった結衣の肌はボロボロに。こうして妻からママになっていくのかな。そんな余裕のない家族の日常に、特別な時間をくれたのは彼だった。
『ようこそ、私の部屋へ』
三浦雅行
千佳子は洗剤・ワックスなどを製造する会社のOLで、後輩の健一と交際を始める。健一は一人暮らしの千佳子の家に行きたがるが、千佳子は頑なに拒絶する。実は千佳子の部屋はゴミ屋敷だった。不信感を募らせる健一を前に、千佳子は途方に暮れるが、友人の遥香に連絡して部屋を片付け始める。
『家族会議と魔法の書』
日根野通
昭和の匂いを残す古い家に一人の女がやってくる。かつてこの家で育った男の妻となり、新居に選んだこの家を掃除すべく、女はやってきた。その様子を伺い、彼女を見定める「家族」達。女は祖母から受け継いだ本を使って、掃除を始める。「掃除は儀式である」その言葉の意味を考え、感じとりながら、女はキレイで家を蘇らせ、「家族」に認められていく。
『朝の花火』
室市雅則
就職活動を目前に控えた男。履歴書に記入できることがなく、埋めるための要素として「ボランティア」を勧められるが腰が重い。気晴らしに花火大会に行ったのだが、酔って寝てしまい海岸で朝を迎える。