リンレイアワード9月期にご応募いただいた作品の中から選ばれた優秀作品17作品です。
『クリーン・クリーン』
柘榴木昴
マルガリータこと角田鋭士郎は清掃会社の平社員。そしてクイーン・オブ・クリーンこと鈴ノ音凛佳は清掃現場で水着になるちょっと変わった、でも憧れの上司だ。二人は取引先から渡された一本の歯ブラシから最近多発している窃盗事件の解明に挑むことに。
『掃除道具屋政談』
林崎ちひろ
掃除道具屋の八五郎。行商の途中、とある裏長屋を通りかかったところで、貧しい身なりだがどこか品のある女と幼い男の子に出会う。親子の身の上話を聞いて同情した八五郎は、売上金を置いたまま、そっと長屋を去るのだが…。
『わが故郷の深いみどり』
東山はるか
中学校を卒業して二十五年、四十歳になった同期生たちが母校の清掃のために集まった。木造の母校は保存され、地域の交流拠点になるという。夭折した同級生・中園芳子の思い出を語らうが、彼女と交際していた川上健司が今回の呼びかけ人だった。作業を終えた彼らは、亡き級友たちに黙とうする。
『僕たちが描きたかったこと』
黒瀬佳代
夏休み、優紀はいじめっ子の坂口たちが浩斗を夜の公園のトイレに呼び出して驚かすという計画を聞いてしまう。優紀も過去に坂口からいじめを受けていた。幼稚園の時に浩斗と壁に絵を描いたことを思い出し、坂口たちが来る前に汚いトイレの壁に絵を描こうと誘う。絵に驚愕した坂口たちも一緒に描き出す。
『八月のスケートリンク』
新垣悠紀穂
子ども病院の看護師・新垣は、入院中のスケート好き小学生・加奈や子どもたちのために、院内に「真夏のスケートリンク」を作って励ますことを計画。若手医師や加奈自身の反対に遭うが、リンクは無事完成。加奈は前向きに手術を受けることを誓う。医師たちも、「本当に大切な事とは何か」を思い出す。
『美しい輪廻』
黒木鞄
ぼくはハウスクリーニングのプロフェッショナルである。日常も仕事もひとつひとつの所作や決め事が完全にルーティン化されており、完璧である。しかし、女のひと(お客さま)と出会い、「わたしの心もきれいにしてくれませんか」と言われてから、ぼくの鉄壁のルーティンはもろくも壊れていくのだった。
『朝の花火』
室市雅則
就職活動を目前に控えた男。履歴書に記入できることがなく、埋めるための要素として「ボランティア」を勧められるが腰が重い。気晴らしに花火大会に行ったのだが、酔って寝てしまい海岸で朝を迎える。