『爆弾』
初瀬琴
(『白雪姫』)
真実を告げることの意味が分からず悩んでいる魔法の鏡の前に、真実が持つ力を教えてあげようという男が現れた。美しい女の持ち物となり、その女に恋をした鏡は「美しい」と教えることに幸せを見出すが…。
『霧の日』
化野生姜
(『むじな』)
霧雨の降る中、爺さまと俺は電柱の影でうずくまる女を見た。女はうずくまったまま、微動だにしない。俺は爺さまにあれは何だと聞いた。爺さまは言った。「…坊、あれは『むじな』だ。人を騙す獣だ。」と。
『野ばら』
化野生姜
(『野ばら』)
大きな星と小さな星の境に、一つの星がありました。星はとても小さく、また資源も乏しかったので、二つの星の住人は星の面積を半分に分けると、お互いに兵士を一人ずつ送り国境として守らせることにしました。その国境の境には野ばらが植わっていたのです…
『待ってる』
柿沼雅美
(『待つ』)
ホームの駅のベンチで、奈子は待ってる。普通の女の子の生活をしているだけなのに、セーターの繊維のように絡み合うさまざまな感情を持って、たとえば春のようなものを待っている。
『コンの銀杏』
鴨カモメ
(『ごんぎつね』)
いたずら狐のコンと百姓の兵十。コンは自分のいたずらのせいで兵十の母親が死んでしまったと思い、人間に化けて兵十の世話をやく。そうと知らない兵十は変化したコンに恋をするが……。銀杏の木に見守られながら、孤独なコンと不器用な兵十の恋が動き出す。
『無口な女』
桜倉麻子
(『もの食わぬ女房』)
自分以外の人間に遣う金はない。女遊びにも飽き、エリートコースを歩むことに集中していた「私」は、支店長として赴任した先で地味な女部下と出会う。金も面倒もかからない、都合のいい女との出会いにほくそ笑む「私」だったが…。
『愛をさがす獣』
芥辺うた
(『美女と野獣』)
昔むかしあるところに、醜い野獣がおりました。乱暴者の野獣はある日、魔女に呪いをかけられてしまいます。それは人間の姿になってしまう呪い。「元の姿に戻りたければ、人を愛し、愛されなさい。」野獣がその呪いの本当の恐ろしさに気付いたのは、一人の少女を愛してしまった時でした。
『はるかなるブレーメン』
志水孝敏
(『ブレーメンの音楽隊』)
ブレーメンを目指して旅立った動物たちだが、泥棒たちから奪った小屋で安楽に暮らし、夢を忘れかけていた。ニワトリだけは努力を続けていたが、美人のメンドリとの間に子供ができ、けっきょく家庭に落ち着いてしまう。しかし、彼は幸せそうだった。