『スーパー竹取物語』
野村知之
(『竹取物語』)
郊外型パチンコ店〈蓬莱王〉のCR機〈新・竹取物語〉の中で、無数のパチンコ玉が踊っている。その一個に視点を絞れば、これは大冒険である。まるで『竹取物語』で「くらもちの皇子」が騙ったホラ話のようだ。彼は落ちぶれて「玉さか(魂離)」ったが、店内は大いに「玉さか(玉盛)」っている。
『豆の行方』
多田正太郎
(『追儺』森鴎外、『ジャックと豆の木』)
「食い物! 食い物! 食い物!」なんでもいい、食えるものなら。それ、求め。全てのものが、挙動不審。目線を、右往左往。ギラギラ、鋭く漂わせ。叫び続け、ぞろぞろと。群れと化して、歩いている。正確にいうなら、イヌかなにかの動物のように、四足でないだけだ。
『新生アリス計画』
ちまき
(『不思議の国のアリス』)
繰り返される『不思議の国のアリス』の物語。それに待ったをかけたのは、主人公アリスその人。突如行われるアリスによる路線変更計画。ドコへ向かい、ドコで着地するのか。それとも、これもひょっとしたら誰かの…?
『夜鷹の照星』
清水その字
(『よだかの星』宮沢賢治)
一九四五年。大陸の荒野で、狙撃手がたった一人で戦っていた。敵を可能な限り足止めせよとの命令を受け、小屋に立てこもり、相棒の銃だけを頼みに次々と敵を撃っていく。だがふいに、弾に当たって苦しむ敵兵の姿を見て、鳥に捕まったカブトムシのことを思い出してしまう。
『かんからり』
太郎吉野
(『雪女』)
ホームレスの青吉は、食料を探しに入った市街地近くの山の中で、周囲から隠すように遺棄されたセダンを見つけた。快適なシートもあり、ドアを閉めると密室となるクルマは格好のねぐらで、青吉にとって手放したくないねぐらとなるのだが、しかし、そこには先住の「隣人」がいた。
『ユートピアンの結末』
和織
(『浦島太郎』)
「ここに、あなたの一番欲しいものが入ってる」ルカはそう言って、タケルにその黒い箱を渡した。LOVELESSと呼ばれ、島に移り住んだ彼ら。それは、永遠を生きる者による、有限においての永遠の定義を問う実験だった。
『雲の猫』
猫野湾介
(『蜘蛛の糸』)
モノを捨ててシンプルになり、本当の自分になろうと「釈かの子の喜捨セミナー」に参加したカンダタダコ。さまざまなものを手放し、勝ち残っていく。最後の二人になったとき、教室が天に浮かぶ一枚の板に変わる。脱落者がいる下界に滑り落ちず、釈かの子がいる天上にたどり着こうするタダコだったが。
『浅草アリス』
植木天洋
(『不思議の国のアリス』)
浅草へ観光にやってきたアリスは、謎の招き猫「うさにゃん」に導かれ、ヲタク・ダンスを踊らされたり、巨大な相撲レスラーに踏み潰されそうになったりと、奇妙な出来事に巻き込まれていく。
『蜘蛛の糸』
anurito
(『蜘蛛の糸』)
これは、別の次元における「蜘蛛の糸」の物語である。我々の知っている「蜘蛛の糸」とは違い、こちらの世界のカンダタは無事に極楽にたどり着いていた。しかし、はたして、それでカンダタは本当に幸せになれたのであろうか。