「マジなに?」私はシンデレラにタバコを一本差し出した。シンデレラは何も言わずそれを口にくわえ私が傍に置いたライターをすばやく取り上げ慣れた手つきでタバコを吸いゆっくりと煙を吐いた。「だから、マジなに?」
昔から頑固で偏屈なじいさんだった。亭主関白でお婆さんを困らせてばかりいたし、しょちゅう怒鳴ってもいた。無口な父さんや物事を冷めた目で見る僕とは似ても似つかない。そんなじいさんは、僕の大学入学式前日に死んだ。
中学生の世界は三つある。ひとつは家での世界。もうひとつは学校での世界。三つ目は、ネット上の世界だ。幸太郎は中一の初夏、死んだ。それから三年後、眠りは覚め、復活した。それは悪魔との契約によるものだった。
妊娠してから急に、なぜか桜桃が食べたくてしかたがなかった。うるうるつるつるとした見た目と歯を立てたときに表面がパツンと破れる感触、甘ったるかったり酸っぱかったりが混じりあっている匂いがたまらなかった。
頬にできたこぶの相談が増え始めたのは、一年前のことだった。こぶは、ある日突然できる。こぶに関して分かっている特徴は二つ。一つは、片方の頬にしかできないこと、二つ目は、女性にしか発症しないことだ。
その少女が入ってきたとき、ヒロヨシは返却本を書棚に戻す仕事をしていた。書棚の隙間越しに見ても明らかにわかる美少女。ヒロヨシは最速の早歩きでカウンターに戻った。彼女は、日本を代表する小説を十冊紹介して欲しいという。
『ビルの木』がたくさん立っている森は『トカイの森』と呼ばれています。このトカイの森に、鈍く輝くスーツを着た若者二人がやってきました。彼らは『ダイガク』という町からきて、ビルの木を見上げ力強く両腕を振りました。
頭が飛ぶ、野蛮な人類。ストレートな軽蔑を込めて呼ばれる種族が、私たち「飛頭蛮」だ。実に不愉快な呼び名ではあるけれど、名は体を表すとはよく言ったもので、これ以上に私たちを正しく形容する言葉などない。
皆、願い事をする時だけ無理して笑顔をつくる。普段、私は家族に邪魔者扱いされ、無視されているのに。これほど辛いことはなく、怒りが込み上げてきた。「いい加減にしろっ!」私はついにキレ、家を飛び出した。