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『薄くて苦い』竹原達裕

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 私はタクシーを捕まえ、梨花と二人で輝く夜の街を脱出した。・・・なんて。

 
「ただいまー」
「いや、私の家でしょ」
 十数分かけて、梨花の家に着いた。玄関で靴を脱ごうとしたらバランスを崩しふらついた。ちょっと酔っているのかも。
「コケんなよー?」
 それを見ていたらしい梨花に失礼なことを言われた。
「はい、どっかテキトーに座って」
 梨花がリビングの電気をつけながら言った。それならば、と私は
「とぉりゃっ!」
勢いよくベッドに飛び込んだ。
「あんた、人のベッドを」
 あー、なにこれ、なんか良い匂いする・・・。沈むベッドに身を任せ、私は目を閉じる。酔いもあり、身体がふわふわと浮いているような感覚に陥る。この瞬間、凄く心地がいい。
「寝るんならスーツ脱ぎなさいよ。しわになっちゃうから」
「もー、お母さーん」
「誰がお母さんか」
 あー、もう、今いいところだったのに!すんでのところで起こされ、私は少し不機嫌になる。私はしぶしぶ上半身を起こし、上着に手をかける。ふと、衣装タンスの上の写真立てが視界に入った。
「あ、これ!」
 大学の卒業旅行で、二人で沖縄に行った時の写真が飾られていた。
「うっわ、懐かしい」
「そんな昔でもないでしょ」
「そうだっけ?」
 そういえば、あの頃からまだ三年しか経ってないんだ。なんだか、勝手に遠い昔のことみたいに思ってた。あの頃・・・私、どんな気持ちで過ごしていただろう。
「ってか、私めっちゃ笑ってるね」

 
「ちょっとごめん。先、着替えてもいい?」
 スーツのジャケットをハンガーにかけながら、梨花が言った。
「お、もちろんもちろん。ははー、眼福眼福」
 着替えの様子を顎に手を当てながらにやにやと見つめる。
「エロ親父かって。恥ずかしいからこっち見ないでよ」
「えー、何それ」
「ほらほら」
 覗き禁止令が出たので私はしぶしぶ壁側を向いた。
「梨花はスタイル良くて羨ましいなー」
 背中越しに、大げさに言う。
「そ?ありがとう」

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