「はーい、お伺いします。5番さんお呼びでーす」
当店の呼び方は、そのテーブルによって違うのである。あるテーブルは学校のチャイムのようなブザー音。あるテーブルはメヌエットメロディブザー。あるテーブルは呼び鈴。しかもテーブルによって鈴の音が違う。大体は私が聞き分ける。たまに間違う。ごめんなさい。スタッフみんな手一杯で誰も5番テーブルに行けそうにない。
「少々お待ちくださーい」
「はーい、大丈夫で~す」佐藤さんの奥さんの癒しの声だ。
少しお待たせして5番テーブルに行った。
「お待たせして申し訳ございません」
「今日も混んでるね!」笑顔の奥さん。
「商売繁盛で何より!」ほろ酔いのご主人。
「ほら、あんたの笑顔でみんな来てくれてんだよ」いつも褒めてくださるおじいちゃん。褒めて伸ばされたい私は喜ぶ。
「じゃあ僕は中もらおうかな」
「えーと、私は日本酒にしようかな。後、レモンサワー1つ、おじいちゃんは?」
「まだいいな、これで」ノンアルコールビールがまだ少し入っているようだ。
「あと、焼きうどんとポテトフライおかわりとぉ、うーん、あと何かおすすめありますか?」
常連さんは大体メニューが決まってしまう傾向がある。
なので時々、「何がおすすめ?」と聞かれたりもする。それを召し上がってもらうと、へぇーこれもおいしいー初めて食べたー、と新しい発見をするようだ。
「うーん、じゃあ四川風麻婆豆腐どうですか?辛いの大丈夫ですか?」
「あ、食べたことない―、辛いの?」
「はい、少し辛いの抑えることもできますよ」
「じゃあ、抑えめのでください」
「ありがとうございます」
こう言っては何だが、うちの店はどれを食べても旨い。
主人は東京の中華料理屋にいたこともあるそうだ。大学生の頃、学校そっちのけで飲食店のアルバイトをしていたらしい。アルバイトのきっかけは、まずそこにお客として入り、料理を食べて本当に美味しくて感動したところで働くらしい。その中華料理屋は一番上の人が四川出身の中国人。料理に感動しアルバイトを始めた。ホントに美味しかったらしく、ただ塩で炒めただけの空芯菜炒めでも凄く美味しかったらしい。私も食べてみたかった・・。今はその方は故郷に帰って、その店もないらしい。そうなると余計食べてみたいと思ってしまう。
その師匠の味に近いのだろうか、当店で出す四川麻婆豆腐はかなり評判が良い。当店の麻婆豆腐が1番美味しいと言ってくださる方も何組かいるくらい。私も大好きである。でも中々私の為には作ってくれない。仕込みも大変だし、しょうがないか。この辛い麻婆豆腐を食べながらホッピーを飲んでみたかった。
人気メニューに鳥をひと房を自家製タレに漬けこんだ鳥唐揚はこれまた絶品。揚げたて鳥唐とホッピー黒。これはやったことがある。マジやばいって。飲食店で仕事をしてる特権だな♪ガーリックポテトフライが揚がった。カリッと揚がった揚げたてのものはホントに最高!
「お待たせいたしました。ガーリックポテトフライです」
すかさず息子さんが手を出す。
あわわわわ「熱いですよ!」