「この秋刀魚、今日水揚げした中でもトロ秋刀魚っていわれる選び抜かれた極上のやつだから特大で脂がのってて、焼魚でもうまいし刺身でももの凄くうまいよ、ほら」
秋刀魚まるまんまをお客様に見せる。
「おおーホントだ。デカい!」
このトロ秋刀魚、脂が凄くのっていて癖がないので、わさびで食べるのがおすすめ。
「刺身だったら日本酒飲もうかな~」
「大将、おすすめの日本酒ある?」
「そうだなー、超辛口の大沼屋あたりどうですか?辛口だけど飲みやすいんですよ」
「じゃあそれで!」
「カウンターさんに大沼屋ね」
「ありがとうございます!」とスタッフ声を揃えて言う。
喉が渇いた私は、ホッピー黒を飲んでいる最中。言いそびれてしまった・・。瓶には3分の1残っている。楽しみはまだある。
「お待たせいたしました。大沼屋グラスです」
何度かいらしているこちらのお客様。ようやく顔を覚えました・・。私は人の顔を覚えるのが超苦手で、客商売は向いてないと思う。
「ありがとうございます。いや、ホントにこの秋刀魚うまいね。こんな秋刀魚食べたことないよ」大袈裟ではない。このお褒めの言葉はよく聞く。
「ありがとうございます!」刺身好きのお客様に言われると私が目利きをしたのではないが鼻高々になる。
店長に、お客様が美味しいって言ってたよと報告すると、決まって「当たり前だね」という言葉が返ってくる。もちろん、それはお客様には報告しません。(苦笑い)
「はいよ、並にぎり!」
そうこうしているうちに3テーブルのお寿司ができたようだ。
握りたてのシャリはほんのり温かい。これが更にうまさを引き立てる。
「ピーンポーン」ちょうど3テーブルのブザーが鳴った。ラッキー。
「ただいまお伺いいたします!」
お寿司を2人前持っていきながらご注文を伺う。
「ちょうどお寿司もできましたよー」
「やったあ」
「お、蒸し海老!」喜ぶ村田さん。大好きらしい。
店長は常連さんの好みは大体わかっているので、何も言わなくても好きなネタが入っている。
「じゃあ、中2つください」
「かしこまりました。ありがとうございます」
浮気をしない2人である。
「お待たせしましたー。中2つです」
「も、ふぁい。あふぃがふぉ」
美味しそうに寿司を頬張っている小田さん。
「これこれ」と蒸し海老にぎりを醤油にちょんちょんとつけて頬張る村田さん。至福の時ってやつですね、まさに。
「チャーンチャラララチャンチャンチャンーー・・」と他のテーブルでブザーが鳴る。
「はーい、お伺いいたします!」
「チリリリリーン」鈴も鳴る。