俺は焼酎とホッピーを勢いよく注ぎ、三人の前に置いた。「慣れた手つきだな」なんてハルが驚く。
シュワシュワと泡が立つのを見て「美味そうだな」とアキ。ナツは早速ジョッキを握り「早く乾杯しようぜ、フユ、音頭とって」と急かした。
「わかったわかった、じゃあ皆んな、久しぶりの再会を祝して……乾杯!」
「乾杯!」
それから俺たちは懐かしい話で盛り上がった。本当にくだらない話ばかり。学生の頃にあんな奴がいたとか、こんなことがあったとか、あいつは今なにしてるんだろうとか。俺たちの間に役職や収入の差なんていうものは一切関係なかった。
三人とも何も変わっていない。あの頃のままで、ただ、いくつか季節が巡りちょっと歳を積み重ねただけだった。
俺たちは代行タクシーが来るまで、店の隣にある公園で待つことにした。
年甲斐もなくブランコに揺られるアキは、揺れが小さくなったところでピョンと飛び降りた。
「ほら、これ記念にもらって来たんだぜ。デザインが気に入ってさ」
アキがバッグから取り出したのは、ホッピーの瓶だった。
「マジかっ」と、ハルも空き瓶をズボンのポケットから取り出して見せた。
「え、俺も!」
ナツが驚いた表情で空き瓶を見せる。
「まさか?……」
三人が同時に俺の方を向く。その顔は期待に満ち溢れていた。
「考えることは一緒だな」
俺はトートバッグに忍ばせていたホッピーの瓶を取り出した。
「バカだな、俺たち」と、皆んなで笑った。
「フユ、ありがとうな。お前がこの街にいてくれるから、集まることができた」
「なんだよ、ハル。かしこまってさ!恥ずかしいな」
「ホントだよな、懐かしい店に懐かしいメンツが集まってホッピー飲めて最高だったよ」
「アキ、覚えてなかったくせによく言うよ!」
「また会おうな」
ナツが瓶を高く挙げる。四つの瓶がコンッと触れた。
俺にはこの街で頑張って生きていく意味がありそうだ。少し涼しい風が吹き抜けた。そろそろ夏が終わり、秋を迎えることだろう。次に三人で会えるまで、いくつの季節が巡るだろうか。