メニュー

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ
               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

\ フォローしよう! /

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ

『季節は巡り』ウダ・タマキ

  • 応募規定
  • 応募要項

 俺は焼酎とホッピーを勢いよく注ぎ、三人の前に置いた。「慣れた手つきだな」なんてハルが驚く。
 シュワシュワと泡が立つのを見て「美味そうだな」とアキ。ナツは早速ジョッキを握り「早く乾杯しようぜ、フユ、音頭とって」と急かした。
「わかったわかった、じゃあ皆んな、久しぶりの再会を祝して……乾杯!」
「乾杯!」
 それから俺たちは懐かしい話で盛り上がった。本当にくだらない話ばかり。学生の頃にあんな奴がいたとか、こんなことがあったとか、あいつは今なにしてるんだろうとか。俺たちの間に役職や収入の差なんていうものは一切関係なかった。
 三人とも何も変わっていない。あの頃のままで、ただ、いくつか季節が巡りちょっと歳を積み重ねただけだった。

 俺たちは代行タクシーが来るまで、店の隣にある公園で待つことにした。
 年甲斐もなくブランコに揺られるアキは、揺れが小さくなったところでピョンと飛び降りた。
「ほら、これ記念にもらって来たんだぜ。デザインが気に入ってさ」
 アキがバッグから取り出したのは、ホッピーの瓶だった。
「マジかっ」と、ハルも空き瓶をズボンのポケットから取り出して見せた。
「え、俺も!」
 ナツが驚いた表情で空き瓶を見せる。
「まさか?……」
 三人が同時に俺の方を向く。その顔は期待に満ち溢れていた。
「考えることは一緒だな」
 俺はトートバッグに忍ばせていたホッピーの瓶を取り出した。
「バカだな、俺たち」と、皆んなで笑った。
「フユ、ありがとうな。お前がこの街にいてくれるから、集まることができた」
「なんだよ、ハル。かしこまってさ!恥ずかしいな」
「ホントだよな、懐かしい店に懐かしいメンツが集まってホッピー飲めて最高だったよ」
「アキ、覚えてなかったくせによく言うよ!」
「また会おうな」
 ナツが瓶を高く挙げる。四つの瓶がコンッと触れた。
 俺にはこの街で頑張って生きていく意味がありそうだ。少し涼しい風が吹き抜けた。そろそろ夏が終わり、秋を迎えることだろう。次に三人で会えるまで、いくつの季節が巡るだろうか。

5/5
前のページ

第6期優秀作品一覧
HOME

■主催 ショートショート実行委員会
■協賛 ホッピービバレッジ株式会社
■企画・運営 株式会社パシフィックボイス
■問合先 メールアドレス info@bookshorts.jp
※お電話でのお問い合わせは受け付けておりません。

1 2 3 4 5
Copyright © Pacific Voice Inc. All Rights Reserved.
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー