9月期優秀作品発表
ARUHIアワード9月期にご応募いただいた作品の中から選ばれた優秀作品10作品です。
『家族とマイホーム』
吉岡幸一
③マイホーム
老いた母と一緒に暮らしたいと考えた私は、母の家の近くにマイホームを購入した。母はけっして娘の私とは一緒に暮らそうとはしなかった。母は倒れ病院に入院するが翌日には無事に退院する。母の七十一歳の誕生日と退院を家族皆で祝う。小学生の一人息子の翔太が母と暮らすと言いだし、母は心うたれる。
『ジグソーパズルの欠片のように』
もりまりこ
①大切な「ある日」
海さんとふたりで暮らした部屋を明日後にする。がらんどうの部屋にぽつんと置かれた2脚の椅子。わたしはこの椅子を選んだ日をしずかに思いだしていた。すっかり片付いた空間がさびしくなったと思ったら、2度も玄関のチャイムがなった。そこに立ってい居たのは<柴田達>だった。
『秘密基地』
岡田麻央
①大切な「ある日」
ある日突然子供部屋の一角に現れた「秘密基地」。それは子供が自らの手で作り上げたマイホームだった。様々な物を詰め込んだそれを目にして、子供の成長を喜ばしいと思う反面、虫の死骸を家に持ち込むのは勘弁して欲しいと私は思うのだった。
『はじめまして、おかえりなさい』
ウダ・タマキ
②新しい生活
約二十年間疎遠になっていたお袋が認知症になった。兄からお袋の介護の依頼を受けた俺は実家に帰り、お袋と同居という新しい生活を送ることとなった。物忘れにより、お袋には俺とのわだかまりは無いようだが、次第に進行していくお袋の認知症は自宅での生活を難しくさせ始めるのだった。
『影部屋』
麦原拓馬
③マイホーム
付き合い始めたばかりの彼女、綾子が急遽啓太の部屋に来る事になった。啓太の部屋は借りてまだ三週間だというのにひどく散らかっていて、彼女を呼べるような状態ではない。そこで、同じアパートの下の階に住むしっかり者の親友、康介の部屋を自分の部屋と偽って彼女を呼ぶことにしたが……。
『我が家のある日の出来事から』
本多ミル
①大切な「ある日」
私の実家、大型マンションの裏には江戸川が流れている。認知症が進んでいく母親を心配して時折実家に帰る私の日課……それは朝刊を階下のポストに取りに行くこと。ある日、川からやってきたサワガニと出くわし、それが母と私、ヘルパーさんとの間の楽しい話題と癒しの毎日になった。
『あいつの長い髪は』
町田舜
②新しい生活
漬け物工場で働いている隆夫と有美。ある日、隆夫は有美とその子ユカと海水浴に行く。そこで、隆夫は有美にプロポーズ。有美はその場でOKして、自分のトレードマークの長い髪を切って海に放る。その後、有美の元旦那が三人を訪ねてくるが、追い返し、隆夫は、有美と風呂に入り、有美の髪を丁寧に洗う。
『フレンチロースト』
小野みふ
①大切な「ある日」
毎朝四時起きでジェットコースターのような日々を送る、シングルマザーのサトミ。唯一の楽しみは、定時であがれたときに駅近くの喫茶店に立ち寄り、フレンチローストを味わうこと。ある雪の日、マスターから誕生日パーティ―をいっしょに祝おうと、誘いを受けたサトミは――。
『遥かなる我が家』
室市雅則
③マイホーム
ついに「我が家」を手に入れる時までのカウントダウンが始まった男。隣には妻と息子。その顔を眺め、ここまでの苦難の道のりを回想する。