ブックショート第四弾のコラボレーション企画として、3月15日(木)から「LOVE KAMATA AWARD」がはじまりました。賞金総額50万円に加え、大賞作品はショートフィルム化が決定します。そこで、東急プラザ蒲田 総支配人の城間剛さんに、本アワードに込めた思い、そして「街が育む世代を超えたつながり」という募集テーマの意図についてお話を伺いました。ご応募前にぜひご一読ください!
-最初に応募者の方に「LOVE KAMATA PROJECT」についてご説明いただけますでしょうか。
「LOVE KAMATA PROJECT」は、東急プラザ蒲田が今年で50周年を迎えることを記念して立ち上げたプロジェクトです。私たちは発足当初から、このプロジェクトを、過去の50年を振り返るだけではなくて、これからの50年を描けるようなものにしよう、と議論を重ねてきました。そのなかで、街の歴史を調べたり、街の方々にお話を伺っていったところ、蒲田の街の50年後の姿のなかに「地域」というキーワードが欠かせないと感じるようになったんです。
-単なる場所ではなく、「地域」。
そうなんです。蒲田で暮らす方々と話していると、人と人のつながりが感じられるさまざまなエピソードを知ることができます。人間って一人では点ですけど、その人に関係する人がもう一人いたらそれは線になって、さらに人が増えていったら面になりますよね。そういった人と人のつながり、面の広さが、蒲田の成熟度を表しているなと感じまして。
-人と人のつながりが。
ええ。それで、そうやって蒲田の魅力を考えていくなかで今度は、私たちが、街の商業施設として何をするべきなのかという議論に移っていきました。東急プラザ蒲田は、街の方々に支えられて50年間営業してきました。そうした方々のために、次の50年に向けて私たちができること……それはやはり、人と人のつながりを、点から線、線から面へと広げていくバックアップをすることなのではないかと考えたわけです。そのシンボルと言えるものが、開業以来、東急プラザ蒲田の屋上からこの街を見つめ続けてきた観覧車です。
-観覧車が。
たとえば、曽祖父や曽祖母、あるいは祖父や祖母と共通の具体的な思い出を持っている方は珍しいのではないでしょうか。けれど、東急プラザ蒲田の観覧車は、親子二代、三代にわたってご利用いただいていることが多い。かつて、ご自分のお子さんを連れてきてくださった方が、今度は、お孫さんと一緒に遊びにきてくださるといったように。つまり、親子三代にわたっての思い出が、この観覧車を介して生まれたと言えるでしょう。まさに、点が線になって面になっていったわけです。私たちは今後も、商業施設としてそういった役割を担っていきたいと考えているんです。
-そういう風に、「LOVE KAMATA PROJECT」のコンセプトが固まっていったんですね。
ええ。それで、「プロジェクト」という形にしたのにも理由があるんです。ただ単純に商業施設の施策として展開しようとすると、どうしても主役は施設になってしまう。それは避けたかったんです。だから、「LOVE KAMATA PROJECT」と銘打つことで、街の面への広がりにみなさまに参加してほしいという願いを込めています。プロジェクトならば、関わった人がみんなメンバーになれますから。
-なるほど。
いま、プロジェクトのポスターのビジュアルを撮影しているんですけど、そこでも街のみなさまに主役になっていただいています。商業施設のポスターというと、普通はファッショナブルなイメージだと思うんですけど、このプロジェクトでは、蒲田で暮らす人々100名の姿が並んでいくというコンセプトで作っているんです。
-蒲田に50年以上暮らしているおばあさんもいれば、最近蒲田で暮らし始めた若い方もいるでしょうし。素敵なシリーズのポスターになりそうですね。また、それ以外にも、このプロジェクトには、蒲田に遊びにいらっしゃる方、働いている方も参加できるわけですよね。
もちろんです。実は、わたし自身も、蒲田に住んでいるわけではなくて。蒲田に着任したのはちょうど一年前なんです。それから、この施設をどうするか考えはじめたところ、結局は街をどうしたいのかとか、大それた話かもしれませんけど、この地域で50年間商売させていただいている私たちが、蒲田のみなさまになにを還元できるのかを考えるに至りました。それで、街を知るようになりましたし、街の方と会話するようになって、いろいろなネットワークもできたわけです。ただ、実際に長く暮らしている街の方とコミュニケーションすると、「あなたはどこに住んでいるんですか?」と、よく聞かれます。それで、あなたは期間限定ですよね、と言われたりも。
-ええ。
ただ、私はそれはそれでいいと思っているんです。プロジェクトには、様々な関わり方があるわけですから。いろいろな方々がいろんな立場で、蒲田という街に関わること自体が、街を盛り上げることだと考えているので。私は、50年間商売させていただいている東急プラザ蒲田の運営者の一人という立場で関わっている。だから、自分の立場でこの街を盛り上げたい。そうやってみんなで、ゆるく、蒲田の街っぽく、点が線に、面になっていけばいいかなという思いで取り組んでいます。
-そして、プロジェクトの一環として、「LOVE KAMATA AWARD」を開催いただくことで、応募者のみなさまもプロジェクトの参加者になるわけですよね。今回、映像化の際は、蒲田が舞台となりますけど、公募する小説やエピソードの舞台は、どこでもオッケーという形です。もちろん蒲田を舞台にした作品も大歓迎ですが、蒲田以外の街を描いた作品が、蒲田のプロジェクトに生かされるという形も面白いですよね。
そうなんです。今回、映像化の舞台は蒲田になりますので、蒲田に住む方からのエピソードもお待ちしておりますし、お時間の許す方はぜひ蒲田にお越しいただいたり、ちょっとでも蒲田に気を持っていただきたいのですが、「街が育む世代を超えたつながり」という広いテーマですから、いろいろな切り口でエピソードや短編小説をご応募いただけることを期待しています。応募いただく前は一つの点として存在していた応募者のみなさまが、このプロジェクトを通してつながって、線になり、面になって広がっていったらいいなと願っています。
-蒲田という街が、今後どんな街になっていくかが、応募作品を通して見えてきたら面白いですよね。さきほど、人と人のつながりが大切というお話をしていただきましたが、「LOVE KAMATA AWARD」がどんな企画になることを期待されますか?
いま、スマホがあれば、知りたい情報はある程度得られるわけですし、SNS等もありますけど、人と人のつながりはそれだけ完結するものではありませんよね。こうした課題は、蒲田に限らず、あらゆる街で問われることになっていくでしょう。それで今回、広いテーマを設定させていただいたわけですから、みなさまご自身がそれぞれの置かれた環境のなかで、そうしたテーマについて考えていただくことが、なにか次の時代への突破口になるのではないかなと思っていますし、考えていただくこと自体がすごく有意義なことなのではないかと感じています。
-買い物さえスマホでできてしまうなかで、デパートにとっても、人と人のつながりは大切になってきますよね。「この店員さんがいるからこの店にくる」といったように。
まさにそういうことなんです。ECでなんでも買えてしまうような時代のなかで、わざわざお店にまで足を運んでいただくモチベーションって、まさに、「あの店員さんに会いたいな、相談したいな」といったことなのではないかと。ですから、私たちは、「街を盛り上げる」という目標に加えて、これからの時代に、ものを売っていく方たちにたいしても、なにか新しい手がかりを提示できないかなと思っています。
-先ほどの観覧車のお話とも重なりますが、親子やおばあさんとお孫さんだったりで一緒に東急プラザ蒲田に買い物にきて、という形もあるでしょうし。
そうですね。そうすると、おばあさんに連れて来てもらったお孫さんが成長したときに、東急プラザ蒲田は、単純に商品を買う場所だけではなくて、おばあさんとの思い出の場所になったりするわけですよね。そういった、お客様の一つ一つのお買い物に付随する物語の舞台として、どれだけ私たちが役割を果たしていけるのか。大きな課題だと思っていますので、このプロジェクトを通して、そういった未来も見ることができたらなと思っています。たくさんのストーリーのご応募をお待ちしております。
-ありがとうございました。