受賞作品:
『どこにもいかずにここにいる』森な子(『みにくいアヒルの子』)
受賞理由:
「みにくいアヒルの子」は、みずからが白鳥であることを大人になってからようやく知ったけれど、人間は大人になる前に誰かがそれに気づかせてあげることもできるはずーー自分の考え方や感覚が周りのクラスメイトと違うから教室にいられないと苦しみもがく友人にたいして、周りと違ったって居場所はあるのだと教えてあげる主人公の優しさ、そして、人の痛みを自分の痛みのように感じてしまう主人公の友人の繊細さ(でも、実際にその痛みをわかりきることなんてできないと理解していることも含めて)は、世の中で生きづらさを抱えているたくさんの人々に寄り添いえるぬくもりだと感じました。
ささいなきっかけで誰もが「みにくいアヒルの子」になる可能性を孕んだこの世界において、少女たちのちいさな物語は、おおきな救いになるかもしれません。