小説

『狼少女』あだちまる子(『嘘をつく子供』)

 私はまた、あの放課後を思い出した。嘘じゃなかったんだって、胸をじわっと熱くした。あれからチビとクロは空へ旅立って、誰とも会うことがなかったから、覚えていてくれてくれただけで、ただそれだけで、救われた。

 しばらく思い出に浸り、「じゃあ、あのコンビニのことも覚えてるのかな……」とジタバタしているうちに弟は無事、教習所を卒業した。そう、私はまた、偶然を取りこぼしたのだ。臆病だから、こうして書き残すことしかできないけど、こうして書き残せるだけで、私には十分で。

 私はもう、嘘をつかない。だけど、メイも、コバヤシと同じようにあの放課後を覚えていて、私と同じように「好き」でいてくれたらいいなと願ってしまう。私は今も、「あったらいいな」を思い描く、厄介な子どものままなのかもしれない。

1 2 3 4 5