小説

『桃』月山(『桃太郎』)

 赤子の口に運ばれる光景を。
 雉は見ていました。
 ばくり。
 むしゃり。
 ごくり。
 敵も味方も、その全てが赤子の口に消え。
 赤子は、満足そうに、にんまりと笑い。
 その手を穴にひっこめて、穏やかに、すやすやと、眠りにおちました。
 唯一生き残った雉だけが。
 広い空の中、ぽつんと。
 ただ、ただ、見ていました。

 見ていました。

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