母は帰ってきた理由を尋ねた。
聞きたいことは山ほどあった。
どうして消えたのか、どうやって消えたのか、どこにいたのか、どのように暮らしていたのか、一体どこから質問すれば良いか分からなかった。
ただ、十年も連絡すらせずにいきなり今になって何故、姿を現したのかが真っ先に不思議であったのだ。
「なにげに顔みたくなったってか、どうしちゃってんのかなみたいな」
ガングロは鼻をすすって笑った。
「よぐわがんねえけど、おめさんがけってきてえがった。宴会だな」
父親がそう言うと母親は早速、台所に向かおうとした。そこに襖が開いた。
「ただいま」
ガングロが振り返るとランドセルを背負った少女がいた。
透き通るような白い肌の少女であった。
「おかえり」
笑顔で返す両親。
ガングロはその少女が誰か分からなかった。
少女もガングロが誰か分からなかったので素直に聞いた。
「誰だあ?」
笑顔で父親が少女に教えた。
「おめの姉さんだ」
少女は信じられないと言った表情でガングロの顔を見た。
「顔の色違ねか?」
ガングロも信じられなかった。
自分のいない間に妹が誕生していたのだ。
「おめさんの妹だ。今年九歳でな。おめさんがいなぐなってから・・・」
父がガングロに妹を紹介した。
「マジ?」
ガングロは困惑した。
勝手に消えたとは言え、その間でさえも両親の愛情は自分に注がれているものと思っていた。
それは間違いであったのだ。