小説

『狼はいない』光浦こう(『狼少年』)

 血の味がする喉でめいいっぱいの大声を出し叫ぶ。
 町のあちこちで明るい電気がいっせいにつけられた。
 町からこちらへと続く一本道を無数のライトが猟銃の発砲音と共に大急ぎで駆けてくるのを確認し、鐘楼台の上で寝転げる。
 助かった。
 返り血のついたシャツと武器を持ったオオカミおじさん達の言う本当を、町の人間がどう解釈するのか

 ー嘘をついてはいけません。ではなく、
 ー嘘と思ってはいけません。という狼少年の教訓を。

 そんな事もう僕には関係ない。
 勝手にしやがれ。

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