コラム

『年末といえばランキング』

 見事1位に輝いた『アルケミスト』は60ヶ国語以上に翻訳されている世界的なベストセラー。1988年にポルトガル語で書かれた小説です。原題は、『O Alquimista』。英語タイトルは、『The Alchemist』です。日本語タイトルがもし『錬金術師』だったとしたら、あまりヒットしなかったような気がします。

 3位にランクインした『赤毛のアン』の原題は、『Anne of Green Gables』。Green Gables(グリーンゲイブルス)とは、プリンス・エドワード島にあるアンの暮らした家の名前です。緑の屋根のお家は、現在でも観光地として多くの人が訪れています。

 トップ5に入っていたのがいずれも文庫本、かなり前に書かれた出版された作品ばかりだったので、2014年のタイトルがないものかと探していたところ、ありました。10位にランクインしていたのは、


『フラニーとズーイ』 サリンジャー 村上春樹 訳

 これは2014年の2月に発売された村上春樹さんの新訳。それまであった野崎孝さんによる翻訳ではタイトルが『フラニーとゾーイー』だったので、ゾーイーとズーイで違和感があると話をしていた記憶があります。もう随分昔のように感じますが、まだ今年だったのですね。原題は、もちろん『Franny and Zooey』。15位にも村上春樹さんの訳が登場します。


『グレート・ギャツビー』スコット フィッツジェラルド 村上春樹 訳

 こちらも名作中の名作。1974年と2013年に公開された映画の翻訳タイトルでは『華麗なるギャッツビー』というタイトルが付いています。Greatを華麗なると訳すところにセンスを感じますが、やはり全部カタカナにしてしまった方が収まりがいいと思います。

 その他20位以内にランクインしたもののなかでタイトルが気になった作品を挙げていくと、

12.『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』フィリップ・K・ディック
→『Do Androids Dream of Electric Sheep?』

そのまま直訳だったんですね。

19.『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ
→『Never Let Me Go』

とてもお洒落だと思います。カズオ・イシグロさんの上品な文章が日本語タイトルにも滲み出ているようで素敵です。

 では、最後にまたクイズです。Amazonのランキングでは20位でしたが、これまで宗教系の書物を除くと世界でもっとも翻訳されている小説の一つで英語タイトルが『The Little Prince』は何でしょうか。

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