小説

『ワンルーム・ジャイアント』そるとばたあ(『ダイダラボッチ伝説』(茨城))

 三人での宇宙旅行。チグとハグはお互いの顔を見あって、ぼくにむかって拍手をしてくれた。
 ぼくへの警戒心もなくなり、ぼくとチグとハグの距離がぐんと縮まった日でもあった。

 ある朝、事件は起きた。
 洗濯機をまわしていると、階段を急いで駆けあがってくる音がこの部屋にまで響いてきた。玄関のドアを乱暴に叩く音。
「おい! 開けろ!」
 羽賀さんだ。嫌な予感がして、ドアを開けずに応対する。
「なんですか? こんな朝早くに」
「この部屋、やっぱりねずみがいるぞ! ねずみっていっても小人だけどな」
 ぼくは激しく動揺した。
「そ、そんなわけないじゃないですか。羽賀さんって、案外かわいいんですねぇ」
「見たんだよ! ベランダで一服していたらよ、この部屋から紐みたいなのが降ってきてさ。なんだなんだと見ていたら小人がその紐を伝って、降りてきたんだよ。おれと目が合って慌てて引き返したけどな。だから、この部屋にいるはずだ」
 ぼくは慌てて、少し開いた窓からベランダにでた。手すりには、チグとハグが括りつけたと思われる紐が確かに結んであった。今、二人はどこだ? というかこの楽園から旅立とうとしていたってことか?
「おい、早く開けろ!」
 これ以上、羽賀さんを待たせると怪しまれると思い、ぼくはドアの鍵を開けた。
「ちょいと邪魔するぜ」と断りもなく急いで靴を脱ぎ捨てて、羽賀さんが部屋へと入ってきた。
 終わった……。

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