小説

『続・雪女』小泉八雲(『雪女』)

 「とうとう言うてしもうたねい。命をもらう約束だが子どものことを考えて命だけは助けてやるべ。子どもの事を頼んだぞ、私はもうここにはいられない…。」雪女は外へ出て吹雪の中に姿を消そうとしていた。が、みの吉は「おいおい親父を殺してフラッと尋ねてきて嫁にきて子どもを4人も残されて今さら出ていくってそれはないだろう。」と大きな声で叫んだ。雪女は立ち止まった。「んだども、私は雪女だで身分が分かればあんたとはもういられねえ、本当ならばあんたも殺さねばならんが子どもいるから…。」「はあ⁉そんな雪女のしきたりはもう古いんだよ!俺が狩りに行っている間誰が子どもの面倒をみるんだよ、お前出て行って狩りに出れなくなったら結局死ぬよ」雪女とみの吉はそれから1時間以上話し合った。出ていく出ていかないとすったもんだして雪女はみの吉の説得に負けて出て行かないことにした。今後いっさい父親を殺したことは蒸し返さないというみの吉の言葉で雪女は合意した。そして、いっさい人殺しをしない事を約束した。何も知らない子ども達のあどけない笑顔に雪女は救われた。
 しばらくすると子ども達もすっかり大きくなっていた。長女のせつは母親ゆずりで色は白くたいそう美人な女の子に成長していた。
母親の手伝い、弟・妹の世話を文句も言わず毎日してくれた。みの吉も自慢の娘だった。
 ある寒い夜、雪女とせつが山に薪を拾いに行って全然帰ってこない。辺りはどんどん寒くなり雪がチラホラ舞ってきた。みの吉は心配になって探しに行こうとしたが、小さな子ども達を置いて家を空けるわけにはいかない。雪はずんずん降り積もり風も出てきて猛烈な吹雪になってきた。お父が死んだ夜と同じだ。みの吉は体がゾクゾクしてくる感じを抑えて二人の帰りを待っていた。それでもなかなか帰ってこないのでみの吉は探しに出ることにした。なんだか胸騒ぎがする。もう何年も行っていないお父が死んだ山小屋に向かった。吹雪の中、みの吉は迷いながら山を歩いた。もう、あの山小屋はどうなっているのかあるのかないのかも分からないが何かに導かれるようにずんずん山を登って行った。ひどい吹雪で視界がさえぎられ体力も限界だったが白い視界の先にうっすらと茶色の建物が見えてきた。「山小屋だ」何年も行っていないのに手入れされていてきれいなままだった。みの吉は山小屋の戸を開けた。薄暗い寒い山小屋の中に白い着物を着た女が二人、倒れた猟師を囲んでいた。「せつ…。何しているだ。」みの吉は寒さで凍りついていたのどから声を絞り出した。着物の女は雪女とせつだった。みの吉はそのまま倒れて気を失ってしまった。

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