小説

『飯縄山は一九一七(ひくいな)』瀬木哲(『だいだらぼっち伝説』(長野県長野市))

 ダイダラボッチは飯縄の頭を削り、自分の足跡を埋めていきました。埋めきれなかったところも、逆に盛り上げてしまったところもありましたが、だいたい平らになりました。
「さあ、どうだ」
「ああ、これぐらいがちょうどいい。黒姫どん、戸隠どん、どうだ」
「きれいだなあ。遠くまで見えて、本当にきれいだ」
「ああ、本当に」
 戸隠と黒姫も喜んで周りを見ています。
 ダイダラボッチは別れを惜しみつつ去っていきました。それから飯縄、戸隠、黒姫は、力を合わせて善光寺平を守っています。
 ダイダラボッチが埋めきれなかった足跡は「大座法師池(だいざほうしいけ)」として飯縄山のふもとに残ります。盛り上げてしまったところは「皆神山(みなかみやま)」として善光寺平の南に残っています。

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