小説

『女神』望月滋斗(『死神(落語)』)

 次の瞬間、二人は観覧車に乗ってジオラマのような街の景色を眺望していた。
「ははあ、人間界を見下ろす女神さまの目線ってこんな感じなんですかね」
「まあ、これでも天界よりはだいぶ低いですけど」
「へえー」
「そんなことより、あなたはああいうタイプの女性がお好きなんですね」
「ああいうタイプって?」
「茶髪よりは黒髪で、ロングよりはショートカットで……」
「そうそう、見た目で言えばどちらかというと地味目な雰囲気の女性が。メガネなんかが似合っていたら、なおさらタイプかもしれません」
「ふーん」
 そんな会話を繰り広げているうちに観覧車はあっという間に一周し、降りる寸前になるといつの間にか女神は消えていた。

 後日、男は懲りることなく天使が足にしがみついた女に声をかけた。
 当然上手くいくはずのないナンパに、その日は頬に平手打ちまで食らってしまった。
「もう、どうしてあなたはいつもそうやって!」
 お決まりのように女神が現れる。しかし、その日の女神の格好はいつものとは違っていた。かつて黄金に輝いていた髪の毛は黒く染まっており、肩に触れないあたりで短く切りそろえられている。そして、目元には黒縁のメガネすら掛けていた。
 その様子を見た男が、確信したように口を開いた。
「女性にフラれるたびに、こうして女神さまに会える。ましてや、一緒にデートまでできてしまうからですよ」
 うつむき頬をほんのりと赤く染める女神をよそに、男はたたみ掛けるように続けた。
「だって、女神さまは言ったじゃないですか。天使が肩に乗った女性との恋は必ず成就するから、とことんアプローチしていいって」
 男は「ほら」と女神の肩を指さした。
「俺を救ってくれたあの日からずっと、天使は決まって女神さまの肩に腰かけるんですよ」

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