小説

『そう願って、わたしも』小山ラム子(『継子の機織り(沖縄県)』)

 息を切らせてレモネードを差し出す姉の姿が、なんだかとてもきれいに見えた。
 受け取ってから一気に飲み干す。ごくごくと喉が鳴って、レモンのさわやかな酸味とハチミツのまろやかな甘みがお腹の奥へと届いて、レモネードは冷たいのに全身がぽわっとしたあたたかさで包まれた。
「おいしい」
 本当に、おいしかった。
顔を上げると、姉はさっきよりもずっとうれしそうな笑顔だった。
「あのね、お姉ちゃん」
 そう言ったものの、そこから先がなかなか続かずに、ぎゅっと唇を噛みしめる。
「わたし、これからはがんばるよ」
 しばらくしてからやっと出た言葉は想像以上に情けなく震えていた。
 お姉ちゃんは少しの間沈黙して、そして言った。
「今だってがんばってるよ」
 はっ、とあの継子の話を思い出す。
 それでも実の子だって真ん中はちゃんと織っていた。もしかしたら、あの子なりにはがんばっていたのかもしれない。
 あれからあの子はどうなったのだろう。母親に言われて最初から織るようになるのだろうか。
 でも、できたら自分で思ってほしい。
 継子が織った布の美しさに感動して、「自分も一から織れるようになりたい」と。
 今までの自分を反省して。だけど、ちゃんと抱きしめて。色々な想いを込めて、丁寧に。
 いつか、全部自分で織れるようになってほしい。

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