小説

『まだまだこれから』ウダ・タマキ(『質おき婆(三重県松阪市)』)

 早苗は顔を上げると、満面の笑みでピースを作った。
「人生百年時代ですよ。皆さん、まだまだこれから! お互い元気に楽しく!」

 案の定、ホームに帰ると施設長に叱られた。もちろん、娘にも。しかし、それも含めて全てが良い思い出だ。
 私達の居室には宇治橋の前で撮った写真が飾られている。あの日、聳える神宮杉や二十年に一度の遷宮を繰り返す本殿の前で、私達はまだまだ未熟だった。
 私は祈った。八十歳になっても九十歳になっても、この三人でお伊勢参りができますように、と。私達の輝かしい人生は、まだまだ続いていくのだから。

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