小説

『走れタカス』吉田猫(『走れメロス』)

 それを見ていたらなんだかいろんなことが頭の周りをぐるぐる回って、体の力が抜けたみたいになった。つい私も泣きそうになり目頭をちょっと拭いたら目が熱くなって涙がぽろぽろ出てきてしまい思わす顔を伏せた。
 髙須の前で泣いてしまうのはたまらなく恥ずかしくて、泣きやめ!って自分に言ったけれど涙が止まらない。
「あれ、アカリさんも泣くことあるんだ?」
 髙須が覗き込むようにして言う。
「ばか!」
 恥ずかしくて、可笑しくて、涙が止まらなくて、私は高須の右手をそっと両手で掴んで自分の頬にあてるとそのまま泣き続けた。

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