小説

『そして誰もが生き返ってほしかった』洗い熊Q(『クックロビン』)

 誰が殺したクック・ロビン。
 それは私よ、スズメがそう言った。

 ……すいません。
 暇を持て余し、ついマザー・グースの詩の一篇を口ずさんでしまいました。
 余りに今の私に合っている様な気がして。

 皆さん、こんにちは。
 それとも今晩はなのでしょうか?
 これもすいません。昼も夜も分からない現状にありまして。
 闇の中のもので僕の姿も見えづらいと思います。僅かに光る、この携帯ライトの明かりでは。

 僕の名前は翔太と言います。
 そして僕はゾンビです。
 そうです、あの生きる屍です。

 えっ? ゾンビの割に元気に話しているって?
 ええ、僕もそう思います。生きていた時と感覚はそう違わないので。

 でも間違いなくゾンビです。
 その確たる証明も出来ると思います。

 まずその為には。
 長い話になりますが、今に至る経緯を聞いて頂く必要があります。

 それはある山中にて。
 肌寒い季節に貸別荘へと訪れた事から始まるのです――。

 

 
 翔太はふっと魘される様に目覚めた。
 目を開けると見慣れる白い天井が。
 温い下半身に少し汗ばんだ体。
 照明で照り返す明るい天井に眼を眩ませながら、額の汗を拭っていた。
 ああ、寝てしまったんだ。翔太は直ぐに現状を認識した。
 誰も借り手のない別荘を、知人伝手に借り受けて。
 今日はそこに泊まりに来ていたんだと。
 山腹のこの辺りは肌寒さを通り越して、思わず備え付けられた掘り炬燵を点けて入ってしまい。
 そして寝てしまったんだと翔太は思い出した。

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