小説

『意地悪なお姉さん』鷹村仁(『シンデレラ』)

「冴子ちゃんと同じクラスの加藤君。」
 美和は顔を紅潮させていた。加藤は冴子と同じクラスの男子で、顔は特段イケメンではないが、とにかく明るい。クラスのムードメーカーのような存在だ。
「嘘でしょ?」
「本当。」
 あまりの事に絶句してしまった。
「・・・・。」
「どうしたの?」
「ううん、何でもない。」
 予想外すぎた。もっとイケメンの同級生とか、スポーツ万能の人とか、イケてる先輩とか、そこら辺だと思っていたが、まさか明るいだけが取り柄の加藤だとは思わなかった。だがもっとまずい事があった。自分と好きな人が被ってしまったのだ。
「あいつバカだよ。」
 軽くジャブを入れてみる。
「あんまり気にしてない。」
 いなされる。
「声デカいよ。」
「いつも元気でいいよね。」
「明るいだけだよ。」
「簡単に真似できる事じゃないと思う。」
 完全に美和は加藤を好きになっている。この女は顔面をあんまり気にしていないのだ。
「誰にも言っちゃダメだよ。」
 はにかみながら美和が言ってくる。誰かに言う。そんな事は全く考えられないほど頭が混乱していた。
 その日から美和の言動が気になって仕方がなかった。「帰ろう。」と言ってくる時も、ちらっと加藤を見る。校舎ではしゃいでいる加藤をほほ笑みながら見つめている美和を時たま目にする。クラスが別なのに美和を見かけるのだから相当なものだ。そんな時、同じ人を好きになっている冴子にとっては地獄だった。いつか美和が告白してしまったらどうしよう。そしたら絶対に成功してしまう。だって芸能プロダクションからスカウトされるほどの美人なのだから。心配の種が尽きる事はなかった。

 美和の衝撃的な告白の日から、晴れない気持ちは生活の大半を占めていた。
「ちょっと、ため息ばっかじゃない?」
 教室でうなだれていると友達の薫が話しかけてきた。
「うん・・・。」
「何?フラれたの?」
「ちょっと変な事言うのやめてよ!」
「だって最近ずっと浮かない顔してんじゃん。」
「まぁね。テンションは上がらない。」

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