小説

『コンビニエンス・プレイ』宮本一輝【「20」にまつわる物語】

「それに?」
「ここはなんでもあるコンビニだから、だから神様がいたっておかしくないじゃん、コンビニの神様。もしかしたら、あなたの罪を許しましょう、って」
 自慢げにも、自嘲のようにも聞こえる作ったような物言いをしてみせる友人に、ついていけない、と言いたげな目を向けていたリサは一度ぎゅっと強くまぶたを閉じ、そして開く。
「コンビニの神様なら、万引きを許さない側だろうけど。もう物は盗りません、とか思わないわけ」
「思ってないけど……でも、こうやって並べていって、店が品物でいっぱいになったら、もしかしたら思うことができるかもしれないじゃない。ね?」
 ナツは同意を求めるように、リサの方を向いて首を傾げて見せた。
 最初からそのつもりで来たの、と尋ねかけて、やめる。きっとまともには答えないのだろうと思った。かわりに無性に彼女に優しくしたくなり、心にも無いことを言った。
「まあ、なったく、酷いくらいに意味なんてないけど。なさすぎて困っちゃうけど。だけど、それだけ意味がないのなら、もしかしてやることに意味はあるのかもね」
「なにそれ、わかんない」
 あっさりと言い捨てられたリサは友人の足を一度蹴り飛ばし、彼女と同じようにポッキーの空き箱に両手をあわせて祈ったのだった。

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