小説

『ササキさんの隣』三波並【「20」にまつわる物語】

「AL-TOKYOJP、0613、2045…。これってなんの数字ですか?」
「ああ、気づきました?それ、私の製造ナンバーです。造られた場所と日付、ですね。」
「えっ、じゃあこれはササキさんの誕生日ということですね。…しかも今日じゃないですか!」
「誕生日…。そういうことになりますね。」
「いやいや、誕生日は大切ですよ。あ、それにササキさん、今日で二十歳になるんですね。」
「二十歳…。本当だ。私、二十歳なんですね。」
 照れ臭そうに、彼女は微笑んだ。
「ハッピーバースデー、ササキさん。素敵な一年になりますように。」
「ありがとうございます。ユミさんよりだいぶ年下ですけど、これからもよろしくお願いします。」
「あ、ひどい。年齢のこと言わないで下さい。見た目年齢変わらないのは、やっぱりずるいです。」
「ふふ、冗談ですよ。さあ、電源切って下さい。」
「はいはい、切りますね。おやすみなさい。」
 少しずつ、彼女の瞼が閉じていった。ゆっくりと動きが止まる中、彼女の口が動いた。
「…ねぇ、ユミさん。私はずっと、あの時の私と、今の私は別人で、ササキミユキとしての私も、結局私ではないと思って過ごしていました。…でも、ユミさんから今日が誕生日だと言われて、私は私としてこの二十年を積み重ねてきて、今もここにいるんだと強く感じました。だから、…あなたは今のあなたを信じて下さい。例え将来に支配されたとしても、あなたはあなたのままだから…。」
 そう言って、彼女は深い眠りについた。
 雨はまだ降り続いていた。私はもう少し、彼女の隣にいたいと思った。

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