小説

『リーリエとジーリョ』イワタツヨシ(『ジキルとハイド』)

 そして彼らは、「自分たちの高度な科学技術を駆使し、長期寒冷化の環境から人々の暮らしを守るための環境をつくり出せば、地球人から恩恵を受けられる」と考え、地球に氷河期が到来するときを移住する時期に設定し、「高度な科学が統合された町づくり」と「アンドロイドの製造」の計画を進めていく。

 移住計画の議論における論点は、他にもあった。「地球人との共存の可否について」もし、その星の人間が産んだ卵が孵化するまでの間に地球人と接触した場合、どうなるのか……。はやり、共存は難しいのか。

 初めて、その星の人間が一人、地球に降りたつ。その男の名は、カーボネル。彼も、平和的に移住が行われ、その星の人間が地球人と地球で共存する未来を望んでいた。
 カーボネルは環境づくりを進める傍ら、その星の人間の反対を押しきり、実験として、まず初めに、その星で産まれて九十年が経過していた卵を二つ、地球に持ちこむ。そして、それぞれを地球の「善人」と「悪人」に所持させた。後にその卵から孵化したのがリーリエと私(ジーリョ)。
 カーボネルは、その二人が誕生した後、「我々星の人間が地球上で誕生し、地球人と共存していくことは可能だ」と伝えている。
 そしてカーボネルは次に、当時その星で産まれたばかりの卵をさらに百以上、地球に持ちこんだ。

 私(ジーリョ)は誕生後、本性を偽り、アンドロイド製造の過程で、密かに、あるマイクロチップをアンドロイドに組みいれる。そしてカーボネルを殺す。
 西暦2051年、マイクロチップが起動し、一部のアンドロイドが反乱を起こす。それが私の第一の計画。
 それから、「百の卵を地球の悪人に接触させて、その卵が孵化する未来で、私と彼らで地球を征服する」企みがあった。それが第二の計画。

 しかしいずれも、リーリエと彼につく人間により阻まれた。私を捕らえようと、もう間近まで彼らが迫っている。
 間もなく、私の時代は終わるかもしれない。しかし私には第三、第四の計画があり、その計画は続いていく。その計画をきみに託したい……。

10
 その伝達は、自分(リュカ)のみに送られているようだ、と彼は気付く。
 ある場所へ向かうように、指示がある。

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