小説

『リーリエとジーリョ』イワタツヨシ(『ジキルとハイド』)

 二人は海の見える丘で朝食をするのに火を焚いている。リュークは温まった海水のスープを飲んでいて、リュカは表面が焦げた小鳥の塩包み焼きをそのままかじっている。塩包みの中から出てきた小鳥にはまだ火が通っていないが、リュカはそれを気にせずに飲みこむ。
 リュークはリュカの食事を横目で見ながら聞く。「それ美味しいのか?」
「まあ、普通だよ」と、リュカは答える。「結局は、どういう食べ方をしてもみんな塩の味しかしない」

 その時刻、第一陣の太陽がその丘の上空の位置にあり、第二陣の太陽もすでに海面から飛びだしている。
 その太陽はサッカーボールほどの大きさで、朝になると海から出てきて、上空を浮遊しながら内陸へと進み、燃料が半ばに差しかかると同じ軌道を戻り、初めに出てきた海の中へ沈んでいく。千の数の太陽が四つの陣営に分かれて飛んでいる。
 その太陽はまだ試作段階にある。彼らは、実用化に向け、いかにその飛行距離を伸ばせるかという課題に対して、日々、PDCAサイクルによる検証を行っている。
 太陽に関しては、他の類もある。例えば、核融合炉の装置で水素を燃料とする太陽。他にも、実際の太陽の僅かな光を拾って拡散するパネルの開発。どれも試作段階にある。
「太陽の代わりをつくる」という仕事があり、チームがある。リュークとリュカはそのチームに属している。しかし二人はよく仕事をすっぽかし、チームの仲間からは「不良品」というレッテルを貼られている。

 またある日の丘で、
「ねえ、また一つ、地球の人間の方が優れていることを見つけたよ」とリュカがリュークに言う。
「それは何?」
「命だよ」とリュカは答える。「地球の人間には寿命があるだろう。でも僕たちは大きな故障でもしない限りずっと生きつづける」
「分からないね。それのどこが人間より劣っているのか」
「だってそんなに長く生きたってさ」
「悲しいな」と、リュークは言う。
「悲しいよ」
「おまえがだよ」
 そう言われてリュカはしばらく黙っているが、次に彼の口から出たのは、「はあ、何か面白いことでもないかな」
 リュカのそのいつもの口癖にリュークが返す言葉も決まっている。「星を見ることだな」
 リュークは星の観察が好きでそう言うが、リュカには、それのどこが面白いのか分からない。

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