小説

『三びきの萌え豚ずきん』小野寺工(『三びきのこぶた』『赤ずきん』ほか)

 母豚は悩んでいた。
「おばあちゃんの家におつかいをしにいってくれないかしら?」
 そういっても、
「それはできないよママ」
「うん、ほかのどんなことでもするからそれはできないよ」
「なにがいい、家事?自宅警備?」
 という答えしか返ってこないのだ。
「だって外は怖いもの、危険なんだよ?」
「おばあちゃんだってそう言ってた」
「おばあちゃんは風邪だけど、外に出るより死亡率は低いよ」
 小さいころからおつかいに行かせようとしているけれど、こどもたちは頑なに外に出る気はないのだった。
「そうなのね…、仕方ないわ。あなたたちはいい歳なのだから、もう家を出て行ってもらいます。」
 ずきんをかぶる者としての規則が守れないのなら、苦渋の決断だが、自分の家を持つ、という豚の規則を守ってもらわなければならない。
「ええ、ママのごはんまだ食べたいのに」
「それは食べにくればいいじゃない」
「無理だよう、危険だもん。送ってよう。」
「もう、困った子たちねえ」
 かわいいかわいい、真珠のたまのようなこどもたちだが、もうとっくのとうに成人済みだ。
 甘やかしてはいけない。
「いい?自分のおうちをつくるのよ」
「「「は~い」」」
 いいこのお返事が返ってきた。



 いちばん上の豚は、合掌造りの家を建てた。寒く、周りに誰もいないような雪の中に住み、必要なものはすべてアマゾンで届けてもらった。
 曰く、「せつない雪みたいな子とか、雪山遭難で温めあう、とかそういうシチュエーション好きなんだよねえ」とのことであった。
 ある吹雪の晩、一人の美しい女が訪ねてきた。つうという名のその女が、どうか一晩泊めてくれないだろうか、というので快く受け入れ、彼は精一杯もてなした。

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