小説

『拝啓、20歳の私へ』公乃まつり【「20」にまつわる物語】

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こんにちは、20歳の私。冬ですが、風邪を引かずに元気にやっていますか?
未来の私は元気に、毎日学ぶ事を忘れずに過ごしています。20歳の頃よりも、楽観的に、難しい事は考えずに生きていますが、外国に友達が出来たり、統計の勉強をしていたり、今のあなたが専門としている事以外の学習もたくさん積み重ねて、それなりに賢く世の中を生きています。
さて、20歳になる私へ、今の私からメッセージを送りたいと思います。長いと、多分あなたは飽きるでしょうから、本当はたくさん言いたい事はあるけれど、短くして、分けて伝えたいと思います。
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 冒頭部分だけ読んで、ページを閉じたくなった。この人の「今」はすごく充実している。外国に友達ができたり、統計の勉強をしている人ならばすごく優秀な人なのだろう。
 そんな人が20歳の自分に何を言いたいのだろうか。私よりもずっと、素敵で充実した20歳に決まっている。
 反発心を持ったまま、ページを飛ぼうとスクロールしたところにあった文字列が、私の心に直撃した。

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『他の人がやろうとしないことを率先してやる姿勢で生きる事』というあなたが20歳でやろうとしていたことは正しいです。そのまま続けてください。

 あの時、色んな人が色んな事をしていて、私はそれをやらなくていいのだろうか、私もみんなと同じようにあんなことをしなくて大丈夫だろうか、という不安を抱える日もあったし、今も抱えているかもしれません。
 けれども大丈夫です。人間やはり、心からやりたいと思って手を出した事でない限り、心に強くは残らないようだし、学習効率も悪いです。その時、その時に自分が本当に好きでやってみたいと思った事を大事にしてください。

 
そういえば、20歳の時、あなたは成人式に参加しませんでした。迷った末の決断のように見えましたが、本当は部活の仲間と自転車旅行に行きたくてたまらなくて、なんて説明をしたら両親が納得するか、考えていたかもしれないですね。成人式、夏でしたもんね。
結果的に参加しなくても大丈夫でした。
大人になってみると、以外と成人式に参加していないという人は他にもいるし、むしろ着飾るお金が浮いてラッキーだったくらいに思っています。
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 私と同じだった。ただ、それだけで共感が持てて、するすると続きを読んだ。

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お父さんに着物姿を見せなくて大丈夫だったか、という心配もしていましたね。写真も撮ったりしない決断をして、本当はお父さん、写真くらい撮りたかったかなあ?と。

その問題も大丈夫です。

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