小説

『不思議な時間の中の私』春日あかね(『不思議の国のアリス』)

【12月31日 午後11時00分】
 気づいたら、私は実家の本棚の置いてある部屋にうつ伏せになっていた。ムクッと起き上がり、辺りを見渡した。何ら変わりない部屋の風景。見る
 と、そこには『不思議の国のアリス』が。ページをめくってみた。すると、いつものように絵が飛び出してくる。アリスがうさぎを追っかけ、穴に飛びこみ、落ちた先の小さな部屋が出てくる。アリスの体が話の内容に合わせ、大きくなったり、小さくなったりする。さらにページをめくり、「おかしなお茶会」のページにやってきた。

 そこには、帽子屋、三月うさぎ、ヤマネの姿があった。が、私の目に留まったのは、3人が悠々とテーブルにつき、お茶会を楽しむ様子だった。テーブルの上には豪華にもアフタヌーンティーやフルーツ、香りの良さそうなハーブティーなどが並べられていた。そこへアリスが登場。三月うさぎがアリスをエスコートし、テーブルに着かせる。例のなぞなぞのシーンでは、アリスが即答し、三月うさぎが解答チェック。言葉のやり取りも問題ない。時間はゆっくりと流れ、物語はスムーズな展開をしていく。笑顔を振りまく女王の姿。物語は、めでたしめでたし。スッキリするけれど、正直、なんだか面白みがない。だけど、時間を理解し、仲良くやっていくというのは、そういうことなのかなと思った。刺激はないかもしれないけど、それが平穏っていうことなんだ。

 時計を見ると、あと1時間もすると新しい年を迎える。時間に追われる一年となるのか、それともゆったりと流れる時間の中で平和に過ごしていくのか、いったいどんな年になるんだろ。ワクワクしながら新しい年の扉が開くのを待つ私であった。

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