小説

『赤穂浪士にお邪魔 二十人の愉快な仲間達』洗い熊Q【「20」にまつわる物語】(『赤穂浪士』『ぶんぶく茶釜』『笠地蔵』)

 忠左衛門はぶんぶくの話を聞いて真っ青になって震駭の様子です。
「うおー!! どうすんだよ、それ!?」と忠左衛門は思わず叫びました。
「なにっ? 内蔵助さん来ないの!?」
「マジ? 討ち入りはどうするんだよ!?」
「うわっ、通りで可笑しいと思ったんだ! だって息子の主税さんも来てねぇんだもん! 他に来てない奴も知ってったんじゃねぇ、それ!?」
 忠左衛門を中心に輪に集まって赤穂浪士達は状況に慌てふためいております。
 そんな錯乱状態の忠左衛門の足を突っついて呼ぶ、ぶんぶくが。
「あの~大丈夫なんですか~?」
「大丈夫じゃないです!」と怒り心頭とばかりの言い返しになる忠左衛門。
「じゃあ止めちゃんですか? 討ち入り?」
「え!? いや……これだけ集まっていては、周囲の人はやるんだと思っているでしょうし……こんな中途半端では……」
「じゃあ、やるんすね」
「いや……でも人数が全然足りてないし……」
「そしたら私が代わりに参加しましょか?」
「え!?」
「いや~私ね、この師走の風物詩に一度は参加してみたいなって思ってたんですよ! もう祭りじゃないですか! 首取れ、首取れ、ワッショイッて感じで」と小躍りして言うぶんぶく。
 巫山戯調子にも見えます狸。癪に障る忠左衛門。だが人数が足りないこの現実。理不尽な危機。
 致し方ないのか。致し方ないのかと苦渋の様子を伺わせて忠左衛門は答えます。
「でも、ぶんぶくさん一匹……じゃなくて一人はいった所で全然足りないし……」
「何人足りないの?」
「え? に、二十人……」
「私にまっかせなさい! いやね、この時期、童話の人間は暇な奴が多くてね。どこぞの耳が異様にデカい黒ネズミの処以外はね。ちょっと集めてくるから待ってって」
 そう言って鉄の胸をボンと叩いてぶんぶくは走り去ってしまいます。
 呆気に捕られて呼び止める暇もなかった忠左衛門でした。

 

「えーと……ぶんぶくさん。こちらの方々は?」

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