小説

『永遠に』ウダ・タマキ【「20」にまつわる物語】

 気付いた時には、ベッドの上だった。読書しながら寝てしまったみたいだけど、いつもと少し景色が違う。ここはとても殺風景で無機質な空間。こんな所にいると頭が変になりそう。私は、ゆっくりと体を起こそうとする。だけど、体が思うように動かない。マスクをした男性達が私のことを上から覗きこんでいる。

「スミレさん!」

 その声はまさか、とそちらの方に目を向けると、やはりあの青年の姿が。もしかして、こんな時に食事の日を決めようというのかしら。

「今晩が峠です……」
 青いマスクの男性が言う。

 何の話をしているのか、私には全く理解できない。それよりもみんなが深刻な顔をしているのが、妙に可笑しかった。食事のことは嬉しいけど、洋服を買ってからにしてほしい。少し予定を先にしてもらおう。まさか、近所へ買い物に行くような格好で男性とお食事に行けるわけない。きっと素敵な赤いワンピースが見つかるはず。20歳の私に、とても似合うワンピースが。だから、その涙を拭いて待っていて下さい。

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