小説

『お伽創始』繁光(『お伽草紙』太宰治『こぶとりじいさん』『浦島太郎』『カチカチ山』『舌切り雀』『桃太郎』)

 浦島は、あるとき、一匹のカメに出会う。
 ヒトの言葉を話すそのカメは、
 浦島を竜宮城という神秘の世界へ案内してくれるという。
 カメに連れられて竜宮城に行った浦島は、
 そこでは、カメ同様、ヒトの言葉を話すタイやヒラメが舞を踊っていた。
 それは浦島にとって珍しい光景だった。
 それに魅入られた浦島は、時を忘れて竜宮城を楽しんだ。
 竜宮城を出た浦島だったが、
 地上は浦島が知るものとは、かなりかけ離れたものへと変わっていた。
 そして、それを超えるショックが浦島を襲う。
 自らの姿を確認すると、ツルの姿へと変わっていた。
 浦島は、そのままどこかへと飛んでいってしまう。
 ミワタス カギリ アレノハラ
 ヒトノ カゲナク ミチモナク
 マツフク カゼノ オトバカリ
 ツルニ カワッタ ウラシマハ
 ソノママ イズコヘトンデユク

 今回は、姉も泣かずに聞いていた。
 まだ、父は外に危険を感じるのか、
 シェルターのトビラに耳をすませながら話を続ける。

 
3.カチカチ山
 ムカシ ムカシノ オハナシヨ
 ヤマオクニ スム オジイサン
 イッショニクラス オバアサン
 アルヒ タヌキガ ヤッテキテ
 むかしむかし、あるところに、
 おじいさんとおばあさんが暮らしていた。

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