小説

『お伽創始』繁光(『お伽草紙』太宰治『こぶとりじいさん』『浦島太郎』『カチカチ山』『舌切り雀』『桃太郎』)

前書き
「あ、鳴った。」
 サイレンが鳴るとともに、父は家族を抱え、シェルターの中へと潜り込む。
 サイレンはすぐに止むが、おそらく地上はまだ危険なのだろう。
 父は、一向に家族をシェルターから出そうとしない。
 3つ上の姉が、「もう出ましょう」と言い始める。
 父は、仕方なく、危険が去るまでの間、話を始める。

1.こぶとり爺さん
  ムカシ ムカシノ オハナシヨ
  ミギノ ホオニ ジャマッケナ
  コブヲ モッテル オジイサン
  アルヒ アサカラ ヨイテンキ
 むかしむかし、あるところに、
 右の頬に大きなコブがあるおじいさんが、住んでいた。
 おじいさんは、大きなコブを持ちながらも、
 そのコブに愛着を抱いていた。
 ある日、朝からいい天気なので、山へ行くことにしたおじいさん。
 その夜のこと、鬼を見つけ・・・
 オヤナンデショウ サワグコエ
 と、ここで、父の話は中断する。

 鬼が出たために、姉が泣きだしてしまったのだ。
 姉が泣き止むとともに、父は話を変える。

 
2.浦島太郎
 ムカシ ムカシノ オハナシヨ
 トアル ヒトリノ セイネンガ
 アルヒ リョウニ ユクミチデ
 カメト デアッタ トキダッタ
 むかしむかし、あるところに、
 漁師の浦島という青年が、住んでいた。

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