小説

『二十年後、変わらないもの』ウダ・タマキ【「20」にまつわる物語】

 その次の日も、またその次の日も、僕は康太を誘って遊びに出掛けた。元々、同級生の男友達がいなかったが、それ以上に康太と遊ぶのが楽しくて仕方なかった。康太にとっても、僕と田舎で過ごす時間は新鮮で、とても楽しそうだった。

 その日は、城田川に架かる吊り橋へ出掛けた。
 長さ百メートル、高さが三十メートル程の赤い吊り橋は、周りの山とのコントラストが美しく、村一番の絶景ポイントとなっている。吊り橋と言っても、林業が盛んな村では機材を積んで山に入る必要があり、その為に架けられたものなので、軽トラックが通れる程の幅と強度がある。それでも渡る時にはゆらゆらと揺れるので、かなりのスリルはあった。
「この橋、渡ると向こう側の山に滝があるんやで。メチャ綺麗やから見に行こ!この村で一番すごいところ」
「う、うん」
「よし!競争!」
 僕は勢いよく走り出した。何度も吊り橋を渡っているので、揺れには慣れたものだった。
 康太の気配が感じられないので、振り返ってみると、その場に立ち尽くしたまま俯いていた。
「おーい!おいでよ!」
 それでも、康太は一歩も踏み出そうとしなかった。
 僕は康太のもとへと駆け寄った。すると、康太の足が小刻みに震えているのが分かった。
「もしかして、怖い?」
 康太は、コクリと頷いた。
「ご、ごめん。いいよ、無理しなくて!違うところへ行こう」
「克樹、俺……明日、帰るんだ、東京」
 一ヶ月くらいの滞在と聞いていたので当然のことだったが、それでも僕にはショックが大きかった。
「明日……明日のいつ?」
「昼過ぎかな。朝に迎えに来てくれて、それからだから」
「そっか……」
 僕は悲しい気持ちを堪え、精一杯の笑顔を作った。
「けど、それなら朝は会えるてことやな!」
 康太もつられて笑顔を見せた。
「そうゆうことだね」
 それから、僕達はいろんな話をしながら歩いて帰っていた。すると、康太が言った。
「ねぇ、タイムカプセル埋めようよ、明日の朝」
 その提案に僕も賛成した。
「じゃあ、明日の朝までの宿題な!」
「オッケー!けど、どこに埋めよかなぁ」
「さっき言ってた、滝の近くは?」

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