小説

『空は青とは限らない』富田未来【「20」にまつわる物語】

心配性な母が、当たり前に、心配そうな顔をしていた。
「大人になったら治るんですか?」
少女は単純にそう思った。
「これは治らないんだよ」
「・・」
「得意な色、苦手な色があると思いますが、どうしても日常に不自由がある場合は、またいらしてください」
少女は磁石を見つめていた。

「あの人も、そういえば色、わからなかったんだっけ」
帰り道の車の中で母は言った。
「遺伝かあ・・」
フロントガラスの遠くを見つめて母が言う。
「イヤだ?」
「そんなことないわよ」
「思い出したくなかった?」
「・・・」

母の言う、「あの人」
少女の記憶にあるのは、真っ赤な色の口紅をつけたガムを噛んでる女の人。あの赤い色だけは、少女の目にしっかり写っていた。
その女は、札束が入った袋をテーブルの上に投げた。
そして、私の父の手を引いて、女は出ていった。

授業中の教室。
歴史の先生が、黒板にどんどん文字を書いていく。
チョークの色を取り替えては、どんどん文字を書いていく先生。
だが少女には、どこの箇所が重要な項目なのか、わからなかった。

 

先生は話しながら、ある文字に二重線を引く。同じ場所に、
少女もノートに二重線を引いた。

お昼休み、少女は席に座って折り紙をしていた。
同じクラスの女の子が、少女の元へくる。
彼女は、カラフルなお箸を何本も持っていた。
「綺麗でしょ」

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