小説

『恋捨て山』中杉誠志(『姥捨て山』)

 そういい残すと、美しい山の魔女は消えてしまった。ハンカチノキを見上げると、白い萼はもとの通りついている。夢だったのか? わからない。スコップで掘った穴は、魔物の口のように地面に空いたままだ。私はそれを埋め直すと、世界にふたりきりになっても愛し続けられる人の写った写真を、そっとシャツのポケットに戻した。
 その翌日の放課後、私は相手を呼び出して、それまで秘めていた想いを伝えた。すると、その子も私と同じ気持ちだった。彼女はいった。
「わたしも、先生のこと、大好きです!」
 そして、その日のうちに私たちは結ばれた。幸せの絶頂だった。

   ※

 数日後、あるところにある、ある中学校の四十代男性教諭が、教え子の女子生徒とわいせつな行為をして逮捕された。男性教諭は「私と彼女は、心から愛し合っていた。愛し合う者同士が結ばれて、なぜ悪い?」などと供述し……。

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