小説

『プラモ捨て山』中杉誠志(『姥捨て山』)

 私は四十リットルサイズのゴミ袋数袋に、部屋にあった完成品未完成品未開封品問わずすべてのプラモを詰め込み、それを車に載せて家を出た。
 今日も明日もゴミ収集日ではないが、幸い家から車で十五分のところに、『プラモ捨て山』と呼ばれる場所がある。そこはその昔、年老いた老人たちが捨てられる『姥捨て山』として知られていたが、時代は変わり、捨てられるものもまた変わったのである。いまは不要になったプラモの捨て場所になっている。なっているったら、なっているのだ。
 私は近くのパーキングエリアに車を停め、プラモをいっぱいに詰め込んだゴミ袋を四袋も提げて山に入った。整備された山道はすぐに尽き、獣道になる。プラモを捨てようというのだから、それくらい覚悟の上だ。私は道なき道を行く。
 しばらく行くと、やがて一本の巨木が見えてきた。1/1スケールの人型巨大ロボットの足かと思うほど、太くまっすぐ天に伸びたスギの木である。
「ここでいっか……」
 すっかり汗だくになっていた私は、そうつぶやいて、巨木の根元に、ゴミ袋を置いた。
 すると、風もないのにスギの枝がはるか上方で揺れ、大量のスギ花粉を黄色く振りまいた。うへえ、私が重度の花粉症だったらこの光景見ただけで死ねるな、と思いながら見ていると、そのスギ花粉が一ヶ所に集まり、やがて、派手なトリコロールカラーの衣をまとった、ひとりの老婆に姿を変えた。ぎょっとして言葉も出ない私に、老婆はいう。
「なにを捨てたね」
「な、なにって、プラモよ。だってここは、プラモ捨て山でしょ?」
「さよう、ここはプラモ捨て山。そしてわしはその山に住む魔女じゃ。おぬし、ここでプラモを捨てるからには、プラモを捨てた者がどうなるか、知っておるのじゃろうな」
「知らないわよ」
「こうなるのじゃ!」
 魔女は叫び、私のほうに指を突き出した。次の瞬間、その指先からスギ花粉がドバァーッと出て、私に降りかかった。花粉症ではない私も、さすがに目を閉じる。そして、そのまま気を失った。

 気がつくと、私は狭い部屋にいた。部屋の隅には作業机があり、机の上や周囲にさまざまな工具が並んでいる。この部屋の第一印象は、刑務所だった。
「なによ、ここ……」
 私は思わずつぶやいていた。するとどこかから、しわがれ声が聞こえてきた。
「そこはプラモ製作のための作業部屋じゃ。今日から一ヶ月、おまえには、そこでプラモを作り続けてもらう」

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